中国の新疆ウイグル自治区ウルムチ市で、2009年、ウイグル族のデモ隊と警官隊が衝突して197人(中国当局発表)が死亡したウルムチ事件から4年が経った5日、同市では武装車両や武装警官が警戒にあたるなど厳戒態勢が敷かれ、“平和"が保たれていることを、6日付の各紙が報じた。日本政府は、ことあるごとに中国の人権弾圧に対して厳しく批判していくべきだ。
ウイグル自治区では、4月下旬、ウイグル族の住民グループと漢族の地元職員や警官らの間で起きた衝突事件で21人が死亡。6月下旬にも、同様の衝突で35人が死亡。支配層の漢族と、侵略されたウイグル族の間で深刻な対立が続いている。
6日付東京新聞は「中国当局、武力で平穏維持」という見出しを立て、「中国当局はウイグル族の抗議活動に対する取り締まりを『人民戦争』と規定し、徹底的な抑え込みを図っている」と伝える。圧倒的な武力によって、デモなどの「言論の自由」も抑え込まれている。
先の大戦の混乱期に中国に侵略され、自由を奪われ、人々が弾圧され続けているウイグルやチベット、内モンゴルでは、たびたび自治区の人々と治安当局との間で衝突が起きている。その際に、中国当局は必ず、自治区住民が「テロ」や「暴動」を起こしたと発表する。
実際に、4月下旬の事件でも、ウイグル自治区政府は「テロ犯罪分子は各民族共通の敵であり、思いやりなどかけられない」(4月27日付産経新聞)と表現し、弾圧を正当化。2009年のウルムチ事件についても、中国当局は、「ウイグル族の暴動」とするが、世界ウイグル会議は、「平和的なデモを武力で鎮圧した虐殺事件」と訴えている。
日本政府は、こうした中国の人権弾圧の問題に対してほとんど発言を控えているが、大国である日本は、もっと国際社会に善悪の基準を発信していくべきであり、地球規模の平和や繁栄に対して責任を持つべきだろう。
また、尖閣諸島をはじめ、中国から武力で威嚇されている日本は、ウイグルで起きている問題を対岸の火事とするのでなく、自国にも降りかかる問題として、国防の強化を進める必要がある。(格)
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http://the-liberty.com/article.php?item_id=6244
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