今国会に提出されている「いじめ対策法」の成立が危ぶまれている。与党の自民・公明と、野党の民主・生活・社民党がそれぞれ提出したいじめ対策法案のすり合わせに難航しているためだ。大津のいじめ自殺事件など、悲劇的な事件を繰り返さないためにも、早期の成立が急がれる。

与野党の法案はいずれも、「犯罪レベルのいじめは警察への通報を義務付ける」「自治体や学校にいじめ防止の方針や計画をつくらせる」という点で共通している。しかし、相違点も多いため、これまで5回の協議が行われてきた。これまで合意したのは、「いじめの定義」を「児童が心身の苦痛を感じているもの」としたことなどごく一部で、加害者への指導や第三者委員会の設置などに関しては調整がついていない。

たとえば与党側の法案では、加害者の「懲戒や出席停止」を明記したが、野党は「厳罰化では解決しない」(8日付産経新聞)との考えにより、「毅然とした指導」「懲戒や出席停止のルールの確認を行う」にとどまっている。一方、野党がいじめ解決のための第三者委員会の設置を義務付けていることに対しては、与党は「現場の負担が増す」(6日付朝日新聞)などと批判している。

犯罪レベルのいじめが横行している以上、加害者に対する明確な処罰は必要だ。また、学校や教育委員会ではいじめが解決できない現状においては、いじめを解決するために第三者が介入する必要もあるだろう。しかし、いずれの法案にも欠けているのは、学校や教師がいじめ隠しを行った際の責任についてだ。

教師が生徒と一緒になっていじめを行った場合、学校ぐるみで事実が隠蔽されてしまえばいじめが明るみに出ることもない。また、教育委員会も、ほとんど「同業者」である教職員を守るため、いじめを積極的に解明しようとしない事例が横行している。大津のいじめ事件でも、学校や教育委員会が事実を隠していたため、滋賀県警による捜査が行われるまでいじめの実態が明るみに出なかった。

幸福実現党は2009年の立党当初から「いじめ禁止法」を提言。今年6月に発表した主要政策でも、加害者への処分に加えて、学校や教師の懲戒処分に言及し、対処責任を明確にすることを掲げている。どんなに加害者への対応を検討しても、学校側が「いじめを許さない」「いじめを隠さない」という姿勢を堅持していなければ、問題は解決しないからだ。

「犯罪」のレベルに達した悪質ないじめをこれ以上野放しにしないために、いじめに関しての学校と教師の責任を明確にした上で、いじめ対策法案を早急に実現すべきだ。(晴)

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