イスラエル軍情報部のトップであるイタイ・ブルン分析局長は23日、アサド大統領のシリア政府軍が反体制派に対して化学兵器を使用したと指摘した。使用された薬品はサリンと見られるとも発言している。イスラエルのネタニヤフ首相は「情報を確定できる立場にない」と、この発言についての態度を明らかにしなかったが、イスラエルはアメリカの同盟国の中でシリア国内に最も厚い情報網を持っており、今回の発言の持つ意味は大きいと見られる。

オバマ米大統領は、化学兵器の使用を「越えてはならない一線」と位置づけ、アサド大統領にたびたび警告しており、もしシリア政府軍が本当に化学兵器を使ったのだとすれば、軍事介入を含めた行動を検討せざるを得なくなる。この問題については、英仏両国もこのほど、シリア政府軍が化学兵器を使った証拠があると国連に報告しており、主要同盟国がそろってアメリカに決断を促す格好になっている。

24日付の英フィナンシャル・タイムズ紙は、欧州高官の話として「アサド政権が化学兵器を使ったという証拠は、疑いようがない。疑わしいのは、アメリカや他の国が、この問題をどうするかだ」というコメントを紹介した。

しかし、アメリカは軍事介入に消極的な姿勢を崩していない。ヘーゲル国防長官は24日、「これは深刻な問題であって、慎重に事実関係を見極めたい」と話している。ケリー米国務長官はこのほど、1億2300万ドルの非軍事目的の支援を反体制派に供与するなど、援助を倍増させる方針を発表した。しかし反体制派への武器供与など、アサド政権の転覆を目指した本格的な介入には及び腰だ。

その理由の一つは、供与した武器がアルカイダ系の過激派の手に渡るのではないかという懸念だ。実際に今月には、シリア反体制派の一派である「ヌスラ戦線」がイラクのアルカイダ系グループとの合併を決めた。リビア内戦で米欧が反体制派に供与した武器が現地の過激派に流れたケースもあり、アメリカは慎重になっている。

また米国防総省は、シリアの化学兵器を除去するには7万5千人規模の地上部隊派遣が必要になると試算しており、アメリカが泥沼の紛争に巻き込まれるのではないかという懸念もある。

だがアメリカは、2年以上も続く政府軍による反体制派の弾圧によって、7万人以上とされる死者と、140万人に迫る難民が発生しているというシリアの現実を直視すべきだ。24日付の米ワシントン・ポスト紙は社説で、「もしオバマ氏が、自ら引いた越えてはならない一線(red line)について言い逃れしたり、そこから後ずさりするようなことがあれば、地域でのアメリカの威信が著しく傷つくことになる」と論じている。

アメリカが尻込みしているこの間にも、シリアでの虐殺は続いている。このままアメリカが「世界の警察官」としての責務をかえりみず、知らん顔を決め込むなら、朝鮮半島や台湾など、次に他の場所で有事が起きた際にアメリカが本気で対応するのか疑念を持たれても仕方がない。オバマ大統領は、アメリカがこれまで超大国として築いてきた信用が崩れかかっていると知るべきである。

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2013年4月20日付本欄 シリア政府軍が化学兵器使用か 英仏が国連に報告

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2013年1月号記事 大統領選直後の「守護霊」インタビュー 軍拡中国を黙認するオバマ氏 日米は神の正義のために戦え

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