中国の海南省博鰲(ボアオ)で7日、アジア太平洋地域の政財界人や知識人など約2000人が集まる国際会議「ボアオ・アジアフォーラム」年次総会の開幕式が行われた。基調講演で習近平・国家主席は「平和は空気と太陽のような存在であり、一度失えば生きられない。大切なのは、各国が対話や平和的な交渉を通じて、互いの関係発展を維持すること」などと述べた。

これが、日本をはじめとする周辺国を武力で威嚇し、自由を求める自国民さえも弾圧する中国トップの言葉か、と耳を疑う内容だ。

同日付の中国国際放送局(ネットニュース)などによると、習主席は「共同でアジア・世界の素晴らしい未来を創造する」というテーマで次のように語った。

「国際社会は総合安全、共同安全、協力安全の理念を提唱し、われわれが共有する地球村を、互いに力比べの場としてではなく、共同発展を図る大きな舞台にすべきである。自らの利益を確保するために地域ないし世界を混乱させてはいけない。大切なのは、各国が話し合いや平和的な交渉を通じて、矛盾と食い違いを適切に解決し、互いの関係発展という大局を維持することである」

興味深いのは、事実上の同盟国である北朝鮮が軍事的な挑発を強めるタイミングで、習主席が、それとは真逆の「国際協調」を唱えたことだ。6日には中国の王毅外相が、北朝鮮情勢をめぐる潘基文・国連事務総長との電話会談で、「われわれはいかなる一方的な挑戦的言動にも反対する。中国の玄関口でもめ事が生じることは認めない」と語っている。

確かに最近の中国は、国連の制裁決議でアメリカと歩調を合わせるなど、横暴に振る舞う北朝鮮とは距離を置くそぶりを見せる。だがそれをもって、中国が方針転換したというのは早計だ。

習主席は7日までに各国要人と相次いで会談。今年のASEAN議長国であるブルネイのボルキア国王からは、南シナ海問題について「中国とASEANの協力関係に影響を与えないようにすべき」という言質を引き出し、ミャンマーのテインセイン大統領とは、ミャンマーの民主化を支持し、経済や教育などの分野で協力関係を強化することを確認した。フォーラム後には、日米と安全保障上の関係が深いオーストラリアのギラード首相と会談する予定で、「『中国包囲網』を分断する狙いもある」(7日付読売新聞)。

つまり、中国は現在、過激な北朝鮮と距離を置いていることを国際社会にアピールしつつ、外交の舞台では覇権拡大を目指して着々と手を打っているのだ。

国内では、鳥インフルエンザのほかに、共産党幹部の汚職や都市と農村の格差、環境などの問題が山積で、国民の不満が爆発寸前という事情もある。大胆な動きは控えて、時間稼ぎをしているが、いずれにしても習主席の「協調路線」は、羊の皮をかぶった狼の姿に他ならないということである。(格)

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