自民党は13日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関し、安倍晋三首相に提出する決議を採択した。TPP交渉参加を容認する一方で、米や麦などの関税や国民皆保険制度など「聖域」の確保を最優先し、それができない場合は交渉脱退も辞さないとするよう、安倍首相に求める内容だ。

安倍首相は15日にTPP交渉への参加を表明するとみられ、甘利経済再生担当相がTPP担当相に兼務で任命される予定だ。また、参加表明後、政府はTPP参加による経済効果の試算を公表する。

一方、シンガポールではTPP交渉参加11カ国による第16回会合が13日に閉幕した。参加国は、日本の交渉参加に基本的には賛成だ。年内締結に向けて、7月に追加会合が開かれる可能性があり、日本はこの会合から交渉に参加できる可能性も出てきている。

しかし、参加国は日本が関税撤廃の「聖域」を主張していることを懸念している。特に、各国との個別の事前協議において、関税撤廃を例外にできるかどうかを打診したことが問題とされているという。参加国は、これまでの交渉で積み重ねた合意を厳守するよう、日本に求める考えで一致している。

日本がTPP交渉に参加した場合、自民党が最優先事項とする「聖域」についても開放を迫られる可能性はある。しかし、TPPには自由主義陣営による中国包囲網づくりという意義もあることを踏まえておくべきだろう。

TPPのルールは自由貿易や知的財産の保護といった概念を基本につくられている。そのため、中国は現在の体制のままでは入ることができない。台湾は10日、TPPへの参加希望を正式に表明し、米国との間で約6年ぶりに貿易・投資会議を再開している。中国に対抗するためにも、自由主義陣営との関係を強化したいという意図が見て取れる。

日本がTPP交渉に臨む際にも、自国の経済繁栄とアジア・太平洋地域の安全保障という2つの視点を持つべきである。短期的で限定的な利害を考えるだけでなく、長期的で国際的な視野を持てば、TPPに参加する意義は大きい。(晴)

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