財政赤字の削減が問題になっているアメリカで1日、政府の歳出を強制的に削減する制度が発効した。これによって、政府予算は2021年度までに計1兆2千億ドル(約110兆円)削減され、そのうちの半分は国防費が占める。政府職員の削減などにより、空港や税関などの公共サービスに影響が出るほか、米軍の海外活動の縮小が懸念されている。

もともとは年初から発効の予定だった強制削減だが、景気への悪影響が懸念されたことで、民主・共和両党は2カ月間の先延ばしで合意した経緯がある。しかし、猶予期間内に両党の歩み寄りは実現せず、強制削減を回避するための協議は期限切れを迎えた。

富裕層増税を訴えるオバマ大統領と、社会保障費の削減を求める共和党との溝は深く、財政をめぐって今後もたびたび攻防が展開される見通しだ。次の山は、暫定予算が失効する3月27日に来ると見られる。昨年10月から今年9月までの2013会計年度の本予算はまだ成立しておらず、米政府の業務は、前年度の歳出規模を続ける「暫定予算」に基づいて行われている。この暫定予算が期限切れを迎えれば、政府機関が閉鎖される事態となるため、これを避けようとする両党の協議がこれから本格化することになる。

強制削減で国防費が長期的に大幅削減されることで、問題になるのは米軍の活動への影響だ。削減開始を受けて、米軍は空母運用の一時停止や、訓練時間の短縮などで対応する予定だが、削減が長期化すれば、「世界の警察官」としての米軍の役割に影響が出始める。ヘーゲル国防長官は「強制削減が長引くほど、より大きなリスクを抱えることになる」と述べている。

オバマ政権は1期目に「アジア回帰」の方針を掲げたが、財政問題のあおりを食うことで、戦略が長期的に成り立つかは不透明だ。今後も米国内の与野党対立は続くが、そのたびに防衛体制に影響が及んでは、日本のような同盟国にとってはたまらない。日本はアメリカとの協力関係を維持しながらも、「自分の国は自分で守る」という原則のもとで国防強化に取り組むべきである。

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