世界保健機関(WHO)は、福島第一原発での事故が住民の健康に与える影響について、2月28日にレポートを発表した。これによると、福島の住民にガンが増加する可能性は低いということが分かった。

WHOは、1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達する恐れがあり、ほとんどが避難している計画的避難区域の住民について、「事故後4カ月避難しなかった」「地元産の食べ物のみを食べた」という、最悪の条件を設定。男女別に1歳、10歳、20歳が、89歳までに白血病や乳ガン、甲状腺ガン、その他の固形ガン(肺ガンや胃ガンなど)になる確率を推計した。

主な推計結果は以下の通り。

  • 最も影響が大きかった浪江町では、1歳女児は生涯の甲状腺ガンの発生率が通常の0.77%から1.29%に増える。しかし、元の甲状腺ガンの発生率自体が低いため、放射線の影響を確認することは難しい。
  • 浪江町の1歳児男女では、生涯のその他固形ガンの発生率が男児で通常の40.60%から41.33%へ、女児で29.04%から30.15%へと増加するが、元の発生率と比べると影響は小さい。
  • 福島市や郡山市では、発症リスクの増加はほとんど見られない。また、福島県内で胎児の成長に影響が出るリスクは低い。

このように、現実よりも厳しめの条件で計算しても、福島の原発事故による健康被害のリスクはほとんどない。厚生労働省と環境省は同日、メディア向けに説明会を開き、「線量推計の仮定が実際とかけ離れている。この報告書は未来予想図ではない。この確率で絶対にガンになる、とは思わないでほしい」と、この推計が高めになっていることを強調した。しかし、避難しなかったとしても健康被害が極めて小さいことこそ、注目すべきだろう。

放射線防護学の専門家である高田純・札幌医大教授は、2011年4月に福島県で20キロ圏内から避難した浪江町民40人の内部被曝を検査。この時点でも甲状腺に溜まったヨウ素線量は、甲状腺ガンのリスクがまったくない範囲だった。高田教授は、「ニュースでは福島は放射能で危ないと言われているが、福島県民は今回の原発事故によって健康被害を受けないというのが、私の調査の結果だ」と発言している。

WHOのレポートは、チェルノブイリなど過去の原発事故の教訓から、「他の健康要因よりも、心理的な影響の方が重大かもしれない」と注意を促している。その心理的な影響の原因としては、健康被害への不安や、経済的な不安、将来に対する不安が挙げられるだろう。次々と放射線被害が「ない」ことが明らかになっているのだから、政府は避難区域の大半を占めるであろう安全な地域を「安全である」と明言し、必要のない強制避難を解除すべきだ。(晴)

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2011年8月号記事 「福島の住民に 健康被害は起きない」 原発を救え!

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2274

2013年1月24日付本欄 「福島原発事故による人体への影響はない!」と国連科学委員会が結論

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5502