英誌エコノミスト(Economist)1月12日号は「中国の最も時代錯誤的なシステム」として、「laojiao」(勾留)という制度を批判している。日本のメディアで紹介されることは少ないので、その概要を紹介。
- 「勾留」とは、警察が法的手続きも裁判もなしに、国民を4年間まで拘留できるシステムだ。ある中国人ジャーナリストのマイクロブログへの投稿によると、中国の中央政法委員会の高官は非公開の会議で、中国が向こう1年以内にこの「勾留」制度をやめると話したという。だが、同様の投稿はすぐさまネット上から削除され、国営新華社通信は、やめるのではなく「改革を進める」のだと報じた。
- 「勾留」は1957年に毛沢東が始めた、警察が人々を簡単に投獄することのできる制度である。中国の公式統計によれば、2008年末時点で中国全土に350カ所の勾留施設があり、16万人が投獄されているという。海外の圧力団体によれば、施設数はもっと多い。
- 16万人の内訳としては反政府運動家もいるが、多くは、薬物中毒の疑いがある者、売春婦、政府への陳情者などだ。家庭教会で信仰していたクリスチャンや、政府が禁じているスピリチュアルな団体の信者などもいる。「勾留」は他の機関の監督を受けていないので、警察や施設の運営者は、個人的な復讐が目的で誰かをブチ込んだり、入所者の労働から利益をピンハネしたり、やりたい放題である。
- たとえ施設や制度を改良しても、警察が司法機関の監督なしに人々を拘留する権限を廃止しない限り、意味はないと言われている。さらには、共産党によるコントロールのほうが強いので、たとえ司法機関が監督してもあまり役に立たないだろう。
- 中国の新指導者は、たとえ「勾留」制度を廃止しても、また別の超法規的拘留制度を始めるのではないか。
法的手続きなしに国民を4年間も投獄するとは、まさに近代国家とも思えない。世界人口の5人に1人を占める13億人の人々が置かれている現状を世界にもっと広く知らしめ、この「大国」のあり方を正す必要がある。(司)
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