メルケル独首相は24日、ギリシャのサマラス首相と会談し、ギリシャが財政支援の条件である財政改革を進めるよう念を押すと同時に、「ギリシャにはユーロ圏にとどまって欲しい」と述べた。ドイツでは、ユーロ危機の解決策としてギリシャ脱退を示唆する声が与党内からも出ており、メルケル氏はギリシャ側の不安を和らげようとしたものと見られる。

しかし一方で、9月12日にはドイツ憲法裁判所が、欧州安定化メカニズム(ESM)への加盟がドイツ憲法に照らして合憲かどうかを判断する予定だ。設立に向けて調整が進められているESMは、財政危機に陥った国を救済するための基金。ユーロ危機以降に設立された救済ファンドは一時的なものだったため、各国は正式な条約に則ったESMの設立を目指している。

訴訟は、ESMがドイツの主権を非民主的に制限する恐れがあるというもの。ドイツはこれまでも財政危機の国々への救済資金を提供しており、ESMでも最大の資金拠出国となる予定だ。しかし、もしESMが違憲となれば将来の救済メカニズムが宙に浮く恐れもあり、ユーロの存続そのものに影響が及ぶ可能性もはらんでいる。

ユーロ危機の解決策をめぐっては、欧州中央銀行(ECB)がかじ取りしている金融政策に続いて、予算などの財政政策も統合が必要ではないかという声がある。しかし、現段階ですら「民主主義の危機だ」とする批判が上がっている通り、財政統合は各国が民主主義で決められる政策の範囲を狭め、国民の自由を制限していく道であると言える。

大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁は、「彼ら(ユーロ圏各国)は心を変えるべきであり、それぞれの国が国家意識や国民国家の立場に立って、自国の金融システムを作り直し、立て直すべきです」と述べている(本誌2012年9月号)。

それぞれの国が国民の意思に基づいて自立した経済のやり繰りをするのか、あるいはドイツなど富める国にぶら下がったままになることを選ぶのか。ユーロ危機は、欧州各国が自立した民主主義国として存続できるのかを、結局は問うているのだ。

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2012年9月号記事 EU金融危機の根本原因

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2012年6月24日付本欄 ドイツは、ギリシャの"ぬるさ"にどこまで耐えられるか

http://the-liberty.com/article.php?item_id=4505