「脱原発」支持8割。
こんな見出しが18日付東京新聞一面トップに躍っている。東京新聞が加盟する全国世論調査会が10、11日に行った全国面接世論調査で明らかになった内容だ。
まるで、日本の大半の国民が積極的な脱原発を支持しているように見えるが、よくよく調査の内容を見ていくと、そうでもないらしい。
まず、設問を見ると、「あなたは原発への依存度を段階的に下げ、将来は原発をなくす『脱原発』という考え方をどう思いますか」と聞いている。
この聞き方だと、現在、原発推進の立場の人であっても、「段階的」「将来は」という条件がつけば、「賛成」と答える可能性がある。従って、8割が支持したと言っても、その中には原発推進派の人も入っている可能性が高い。
その内訳は、「賛成」が43.7%、「どちらかといえば賛成」が35.9%で、計79.6%だ。
また、別の設問では、現在停止中の原発について、「定期検査後、安全評価で問題がなかった原発について、あなたは再稼動することをどう思いますか」とある。
その回答は、「再稼動を認める」人が15.6%、「電力受給に応じ必要な分だけ再稼動を認める」が53.5%、計69.1%が再稼動を認めている。
従って、この結果から分かるのは、
■将来的に、「脱原発」を支持するのは8割
■「再稼動」を認めるのは7割
ということになる。
しかし、実際の見出しは、
■「脱原発」支持8割(メインの見出し)
■必要分だけ再開54%(サブの見出し)
となっている。
実際の結果は、「7割が再稼動を認めているが、将来は脱原発を支持するのが8割いる」にもかかわらず、再稼動を認める人が5割しかいないように見せることで、世論は再稼動よりも脱原発を強く支持しているような印象を与えている。
再稼動を認めている人が15.4%いる事実は、1面の記事では一切触れられておらず、2面の「世論調査の詳報」での細かい調査結果を丹念に拾って読み取っていかないと、出てこない数字だ。
こうしたさりげない印象操作によって、世論が形成されていくことがあるので、情報の扱いには注意を要する。(村)
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