1年が経とうとしているのに遅々として進まない東日本の被災地復興、増税一辺倒の経済政策、米軍基地移転問題などで右往左往する外交政策によって、支持率を下げ続ける野田内閣。一方で、実は、宇宙開発の分野では意外な改革を進めている。

政府は今年1月、独立行政法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)の設置法(JAXA法)を改正し、現在は宇宙開発・研究、人工衛星の開発・打ち上げなど、「平和目的」の業務に限定するとした1969年以来の規定を削除する方針を固めた。

こうした方針転換によって、宇宙研究を防衛分野の衛星攻撃兵器(ASAT)、偵察衛星や早期警戒衛星の研究開発、ミサイル防衛(MD)の精度向上にまで応用する考えだ。

JAXAは来年、運搬力を倍以上に高め、ビジネス分野での競争力強化も視野に入れた大型衛星の打ち上げも可能にする、改良型の国産ロケット「H2A」の初打ち上げも予定している。その他、A-GPS(アシステッドGPS)を強化するため、準天頂衛星システムの分野にも重点を置き、今後、7基の準天頂衛星を打ち上げ、正確なポジショニング・システムを確立する計画もある。

「平和目的」のひと言で、40年以上も手足を縛られた状態だった宇宙開発の分野がようやく自由を得て、国際競争力を高めるチャンスがやって来たようだ。一方で、法改正によって宇宙・航空関連の研究開発が軍事目的に利用され、日本が再び軍事大国化への道へ進んでゆくことを危惧するグループもまた存在している。

しかし、北朝鮮の核保有や中国の軍事力増強を受け、日米両国がミサイル防衛を推進すると、中国は対抗策として衛星攻撃兵器を開発、2007年1月には自国の人工衛星破壊に成功している。もはや、近隣国の軍事拡張を、指をくわえてながめてはいられない情勢になった。

このJAXA法改正を一つのステップとして、やはり憲法9条改正の議論が必要不可欠だと言えるだろう。〈宮〉

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2012年3月7日付本欄 日本は航空・宇宙産業を基幹産業に育てよ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3926