法務省は日本文化研究者で米コロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン氏(89歳)に日本国籍の取得を認め、8日付の官報で告示した。
貧しい母子家庭に育ったが、飛び級を繰り返して16歳でコロンビア大学に入学。中国語と漢字に興味を持った氏は、18歳の時に安価で手に入れたアーサー・ウェイリー訳『源氏物語』に感動。漢字への興味の延長線上で日本語を学び始めたという。
日米開戦後には、米海軍日本語学校に入学、日本語の訓練を積んだのち情報士官として海軍に勤務し、太平洋戦線で日本語の通訳官を務めた経験がある。
30歳の時に京都大学大学院に留学。以後、安部公房、谷崎潤一郎、川端康成や三島由紀夫など多くの日本の文人たちとも親交を深め、日本や日本文学に関する著作は、日・英両語で多数ある。
1年前の東日本大震災後、放射能被害を恐れた外国人が次々と日本から「脱出」するのを目にして「一人だけでも逆へ向かおう」と決意。
昨年4月にコロンビア大学を退職して9月に来日した際には、「希望があれば乗り越えることができる。終戦直後、私が訪れた東京は煙突しか残っていない街だったが、いまは立派な都会になった。東北にも奇跡は起こる」と、日本人を勇気づけた。
来日後は東京都内で暮らし、被災地などを精力的に訪問して講演や執筆活動を続けており、帰化後の氏名の漢字表記を「鬼 怒鳴門(キーン・ドナルド)」にするとも発言している。
日本を愛する氏の著作によって、日本への理解を深めた外国人も少なくないだろう。政治の混迷による国際社会における日本の経済や外交政策に対する不信感の増大や、影響力の低下を阻止することは、キーン氏の「日本への愛」に応える道ともなるのではないだろうか。〈宮〉
【関連記事】
2012年2月号記事 2020年世界は日本を仰ぎ見る Part1
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3569
2011年11月号記事 国際人に必要な正義、誇り、そして勇気 「大川裕太のアメリカ英語武者修行」より─鼎談抜粋レポート