世界銀行のゼーリック総裁は27日、北京市内での講演で、「中国の、現在の成長モデルは持続不可能だ(unsustainable)」と指摘した。世銀はこのほど、中国政府のシンクタンクである開発研究センターと共同で「中国 2030年」というレポートをまとめたが、ゼーリック氏の発言はその発表イベントでのものだ。

レポートによれば、中国経済は、ここ30年にわたって平均年率10%以上の高い成長を続けてきたが、今後は、必要な改革を行ったとしても、2030年までに成長率が5%程度まで鈍化する見通しだ。改革が滞れば成長はさらに鈍化する恐れがあるため、レポートは、経済自由化や以下のような抜本的な改革を求めている。

  • 市場での政府の役割を縮小し、民間経済を発達させるなど、市場の自由化を進める。
  • 研究機関として優れた大学を整備し、産学連携によってイノベーションを促進する。
  • 環境問題への取り組み、社会保障の拡充、財政改革、世界経済へのさらなる参画。

輸出と投資に偏った成長パターンを示していた中国経済だが、ゼーリック氏の認識どおり、そのモデルも立ち行かなくなってきている。

これとは別に、国際通貨基金(IMF)は、中国経済の今年の成長率を8.2%と見込むが、輸出に偏った構造のため、米欧の経済が落ち込めば、成長率は4%ほどに減速する恐れがある。また、年金などのセーフティーネット拡充の必要性や国内消費の拡大で、経済のバランスを取るアプローチも求められている。

現在の中国共産党政府は、言論の自由などの基本的人権を制限する一方、高い経済成長を維持することで政権を維持してきた。だがいまや、国民の経済活動をはじめとする多くの自由を認め、国民の幸福の最大化を目指さなければ、その経済成長さえ危うくなるというジレンマに陥りつつある。

中国国内における「政治」対「経済」の戦いで、「経済」に軍配が上がる日は近いだろう。

【関連書籍】

幸福の科学出版ホームページ 『平和への決断』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/detail/html/H7010.html