農水省が、農林漁業者が食品加工や流通などの事業に進出するのを支援する官民共同の投資ファンドを立ち上げると、7日、各紙が報じている。

政府は7日、官民ファンド「農林漁業成長産業化支援機構」の設置法案を閣議決定した。今年10月をめどに発足し、農林漁業者が加工・流通・販売の分野に進出するのを後押しする。

2012年度中に政府と民間企業が支援機構に320億円を出資し、農水省はそれ以降も毎年400億円規模の追加出資を行う予定。民間では食品会社のカゴメなどが出資を検討しているという。

こうした官民ファンドについては、幸福実現党が2009年の衆院選の公約以降、「官民共同の『リニア(交通革命)ファンド』『未来産業創造ファンド』を立ち上げ、官民の出資を募ります。投資額に応じて国家未来事業債(社債)を発行して資金を集めます」「新たな基幹産業、未来産業となり得る分野に政府として10年以内に100兆円投資します(航空・宇宙産業・防衛産業・ロボット産業の創出、海洋開発、新エネルギー開発、食料増産など)」とうたっている。

「未来産業」の中に食料増産や生産性向上などのための農業ファンドも含まれている。

幸福実現党の政策をまたもパクッたのかは分からないが、民主党政権がパクリをやる場合はいずれも中途半端で、その政策が「効果がない」と判定されかねない。例えば、高速道路無料化については、幸福実現党の母体の幸福の科学として、本誌が98年から提唱しているものだが、人やモノの移動のスピード化という「交通革命」を進める中心概念が分かっていないために失敗に至っただけだ。

官民ファンドについても、同じような結果になる可能性が高い。高齢化し停滞する日本の農業を産業として再生するためには、資金だけではなく、担い手も含めて「新しい血」を入れなければならないからだ。

現状では、株式会社を設立して農地を取得しようとしても、農業関係者の半分以上の出資がなければ、取得が認められない。新規参入を事実上、既存の農業関係者が阻んでいるために、農家の高齢化と農地の放棄が進んでいるのが実態だ。

農家の過度な保護政策を改めない限り、官民ファンドでいくら資金を注ぎ込んでも無駄金になってしまうだろう。(織)

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2011年1月8日付本欄 農業参入への緩和、農水省は反対

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=908