3日付米紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンでロイターの女性記者が、「神の国アメリカ」をキーワードに興味深い論説を展開している。以下、要旨。

  • フロリダで大勝したロムニー氏が共和党の指名を獲得すると決まったわけではないが、秋の大統領選がロムニー対オバマになるなら、中心争点はもう見えている。米国は神の下(もと)で一つにまとまっている国(one nation under God)なのか、それとも政府が国民の99パーセントのほうを優遇する国なのかということだ。
  • ロムニー氏は先月テレビで話した。「米国民を99%と1%に分断する考え方を大統領が唱えるとしたら、神の下の一つの国という概念とまったく相容れない、かつてない米国像だ」。1%とは富裕層、99%とはそれ以外の圧倒的多数のことである。一方のオバマ大統領は先日の一般教書演説で明白に99%の側に立ち、彼らの財産を取り戻すことこそ「我々の時代の決定的な問題だ。これほど差し迫った課題、これほど重要な論点はない」と述べた。
  • 米国内の収入格差が広がる理由として、技術の進歩を挙げる経済学者が多いが、グローバリゼーション、特に中国貿易の増加がブルーカラーの賃金を押し下げている要素も大きい。ノーベル賞経済学者スティグリッツ氏は言う。「米国と中国のように経済レベルの異なる国の市場が一つになっていけば、高いほうの賃金が下がる。グローバル化とはそういうことだ」
  • グローバル化が止まらない以上、米国人はもはや「神の下の一つの国」ではなく、「神の下の一つの世界(one world under God)に住んでいる。世界は全体として豊かになっており、それに伴う痛みを欧米先進国の労働者が担っているのだ。

今や自国の経済繁栄を考える上で、地球全体の経済とのつながりという視野は欠かせない。米国に限らずこれからの政治家は、時代遅れの階級対立論でも自国中心主義でもなく、「神の下の一つの世界」という普遍的な立場に立って国を導くべきだ。(司)

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