玄葉光一郎外相とロシアのラブロフ外相との会談が28日、都内で行われ、北方領土問題についても議論されたが、ラブロフ外相は「四島のロシアへの編入は第二次世界大戦の結果」との考えを主張。進展はなく、3月のロシア大統領選を控え、新体制発足後に持ち越された。
北方領土問題は歴代内閣で取り組んできたが、なかなか進展を見ない。日本が1945年8月15日を終戦とし、その後にロシアが北方領土を不法に占拠したと見ているのに対し、ロシアは9月上旬を終戦としており、「戦争中の正規の戦闘で北方領土を奪った」と認識している。この溝が北方領土問題でのすれ違いの原因だ。
ただ、日本としては戦後の長い交渉の歴史とは別に、中国の軍事的脅威という新たな環境が生まれていることを考えるべきだろう。軍拡を進める中国、核兵器を事実上持った北朝鮮の同盟に、軍備の再建を進めるロシアが加わると、日本にとって極めて不利な軍事バランスとなる。
ロシアとしては、シベリア・極東の経済開発に日本の資金や技術を期待しており、経済面から連携を深め、中国、北朝鮮に対する包囲網を形づくっていくべきだろう。3月には再びプーチン大統領が誕生する。プーチン氏も中国に対する警戒感は強く、経済開発と引き換えに、北方領土を返す可能性はある。今後10数年の対中国戦略の一つとして、北方領土問題に取り組むべきだろう。(清)
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