アメリカの下院で審議中の「オンライン海賊行為防止法案(SOPA)」と上院に提出された「著作権侵害防止法案(PIPA)」に抗議するため、アメリカのウィキペディアが18日に24時間のストライキを行った。
また、グーグルやフェイスブックをはじめ、アメリカの約7000のサイトもウィキペディアの趣旨に賛同して、抗議行動を起こした。
審議中の法案は、海外のウェブサイトによるアメリカ企業の知的財産権の盗用を防ぐことを目的にしているが、ウィキペディアやグーグルなどがリンクを張る外国のサイトが、映画、テレビ番組、音楽などを無断で違法コピーしていないかを運営者側が監視、削除する義務が生じ、見落とせば運営者が処罰されることになるという。
厳しい「検閲」制度を作って、オンライン上著作権侵害を防ごうと躍起になって議会に働きかけているのは、中国の海賊版の氾濫や違法ダウンロードなどで損害を被っているとされるハリウッドの映画業界や音楽業界で、「ハリウッドVSシリコンバレー」の戦いとも呼ばれるこの対立構図は長らく続いている。
ストライキ中、ウィキペディアの告知ページには、読者の郵便番号を入力する欄が設けられ、入力すると読者の選挙区を代表する上院議員と下院議員の電話番号とメールアドレスが表示される仕組みになっていた。
ウィキペディアの発表によると、この「サービス」を使って、19日の時点で800万人以上が国会議員の連絡先をチェックしたという。実際に議員にメールを送った人も少なくなかったようだ。グーグルもネット上で、議会に提出するための反対署名を集めている。
アメリカでは大統領選が近づいていることもあり、オバマ大統領は「表現の自由を制限する恐れがある」との認識を示しており、有権者の動向に神経質になっている議員の中でも、これらの法案への支持を撤回する動きが出始め、19日には35人の上院議員が「PIPA」に反対の立場を表明した。
何よりも「自由」を尊ぶ人たちがつくった国、アメリカらしい動きとも言えるが、瞬時に地球規模の世論をつくったり、大国の大統領や議員の言動に影響を与えられる「ネット」の強大な力の使い方には、慎重であるべきかもしれない。〈宮〉
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