全米で2009~2010年にトヨタ自動車の大量リコールを引き起こした急加速問題について、全米科学アカデミーが「トヨタの電子制御システムに問題はなかった」とする報告書を発表した。20日付各紙が報じている。
この急加速問題で、トヨタの米国での販売は大きな打撃を受け、新車販売シェアは09年の17%から11年には13%に低下。同日発表された11年の世界の自動車販売台数も、ゼネラルモーターズ(GM)が4年ぶりに首位に返り咲き、トヨタは首位から3位に後退した。
全米でバッシングされたトヨタ車の急加速問題とリコールは、自動車産業で日本に首位を奪われた米国人の、誇りを傷つけられた「腹いせ」とも見られていた。
だが、そのような中でトヨタが「シロ」を勝ち取った背景には、「日本人に対する信用」があったと、日下公人氏が「Voice」3月号で書いている。以下、そのくだりを紹介しよう。
「トヨタのリコール問題で、豊田章男社長がアメリカの公聴会に出席したときである。(略)最後に『トヨタのクルマは世界で何百万台も走っています。そこには全部「トヨタ」という私の祖父の名前がつけられています。だから、きちんとしたクルマをつくろうと考えています』と。この発言の瞬間、トヨタは勝った。経済学や理屈を超えた人情の世界は、いまも世界に存在するのである。それを示すには日本人が一番だ。(略)日本が積極的に発言するようになったとき、世界は本当に生まれ変わる」
日下氏は、本誌2月号でも「アメリカやヨーロッパの経済が衰退しているのは、日本と比べて道義・道徳が低いから」「日本は世界の見本となる国です」と、日本人が自信さえ持てば世界中から尊敬を集めることを強調している。
政治では混迷が続き、リーダー不在の日本だが、それを支えている日本国民のモラルは世界の中でもトップクラスなのだ。あと必要なものは、ほんものの「自信」だ。その自信が持てない背景には、戦後刷り込まれた自虐史観と、人間として一番大事な背骨である「宗教心」を戦後軽視してきたことがある。「宗教が尊敬される国」になったとき、日本は世界から仰ぎ見られるだろう。(仁)
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