「ソフトパワー」の概念を提唱したハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が、18日付米紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンで標題の件を論じている。

ソフトパワーとは、軍事力や経済力などの「ハードパワー」ではなく、説得力や魅力(attraction)によって成果をもたらす能力のこと。以下、同紙から。

  • 中国の胡錦濤国家主席は年初に、中国が西洋文化に打ちのめされつつあると警告する談話を発表した(本誌注・中国共産党理論誌「求是」1月1日号に掲載された昨年10月の談話)。「国際敵対勢力による、わが国の欧米化・分裂化の画策が強まっている。彼らは長期的には、イデオロギーや文化の領域で浸透を図っている」と。
  • 2009年に中国政府は、ブルームバーグやタイム・ワーナーに匹敵する国際メディアをつくるため数十億ドルを投じる計画を発表、中東のアル・ジャジーラを真似た24時間放送の新華社ケーブルニュース局(英語放送)を始めた。防御面では、国内で公開する外国映画を年間わずか20本に制限(本誌注・日本は400本以上)、西洋の娯楽番組を真似したテレビ番組の制作も制限している。
  • だが最近のBBC調査によれば、中国の影響力への評価はアフリカとラテン・アメリカの大半では肯定的だが、欧米、インド、日本、韓国では概して否定的だ。プロパガンダに満ちた新華社ケーブルニュースの視聴者も少ない。
  • 文化を外国にアピールしても、国内の現実が伴わなければソフトパワーの獲得は難しい。2008年の北京五輪は成功したが、直後にチベットや人権活動家を弾圧したため、中国のソフトパワーは地に落ちた。上海万博の成功後にはノーベル平和賞受賞者が投獄された。中国はソフトパワーを得たければ市民社会の才能を解き放つ(unleash)必要がある。

かつて「文化大革命」の名の下に大量の粛清を行った彼らには、文化とは自由の土壌に花開くものであり、統制という冷たいコンクリートの上には咲かないことが分からないようだ。(司)

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2011年12月24日・25日付本欄 中国は孫子や孔子の思想を「ソフトパワー」にできるか(前後編)

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