2012年2月号記事
ギリシャ危機から始まった欧州の債務危機は、ついに崩壊に向けての引き金を引いてしまったようだ。
12月8日~9日にかけて欧州連合(EU)首脳会議が開かれ、ユーロ圏の財政規律を強化することで合意した。その結果、EUの財政再建を次の三段階で進めることになった。
■財政が悪化した国に自動 制裁を科す。
■予算編成への介入制度を 新設する。
■財政赤字ゼロの義務付け を憲法などで法定化。
合意を受けて欧米の株式市場は上昇、ユーロも対ドルと対円で上昇した。イタリアやスペインの国債利回りも低下した。市場は、EU首脳会議での合意を好感したのだ。
今回のギリシャ危機がイタリアやスペインに飛び火してしまったのは、金融政策を統一しても、財政政策が各国でバラバラであるため、十分に対応できなかったと考えられている。そのため、ユーロ圏の財政政策を統合する方向での決断が評価されたわけだ。
財政規律強化だけではEUは再生できない
しかし、財政統合に向けて一歩を踏み出したこの決断こそ、ユーロ解体への引き金になるだろう。
今回の対策は欧州危機を克服するためにEUが一丸となって、「積み上がった借金を強制的に削る」というものだ。
しかし、物事を解決するためには、何が原因かを探って、それを解決する必要がある。
借金返済の場合、個人であれ、企業であれ、政府であれ、原因はほぼ決まっている。
(1)収入が足りない
(2)使い過ぎ
(3)使い道が間違っている
この三つだ。従って、対策は (1)収入(税収)を増やす、(2)無駄な歳出を減らす、(3)使い道を改める、の三つ でなければならない。
にもかかわらず、(2)の歳出のカットばかりを議論している。(1)と(3)の議論を同時にしなければ再生は果たせない。
必要なのは財政出動だ
(1)の 収入を増やすためには、単に数合わせをして日米の経済圏に対抗しようとするのではなく、独自の経済成長モデルを築く必要がある。そのためには未来ビジョンが必要であり、その上で必要な投資をしなければならない。
リニアなどの新しい交通インフラや宇宙・海洋開発など、必要な投資はいくらでもある。夢のあるビジョンの欠如こそ、収入が減っている原因だ。
(3)の使い道もおかしい。ギリシャ危機で明らかになったように、年金などの 社会保障に過剰にお金を使っていては、経済が成長するわけがない。従って、社会保障に使うお金を減らして、リターンを生む未来事業に投資する形で財政を見直す必要がある。
財政規律の強化ではなく、逆に財政出動こそが必要なのだ。投資をしてリターンを得てこそ、収益は改善する。この簡単な理屈が理解されないことが、最大の問題だ(増税を訴える日本も同様だ)。
欧州統合はそもそも無理だった
そもそも言葉も文化も経済規模も違う17の国が、一本の経済政策でうまくいくはずがない。ユーロを導入して金融政策を一つにするだけでも無理があった。その無理がたたって、今回の危機をもたらしたにもかかわらず、今度はさらに財政政策も一つにするという。
身長も体重もバラバラの17人に、無理やり同じサイズの服を着せて破けたら、「靴のサイズも統一しなかったのが悪い」と言っているようなものだ。
ユーロはいずれ解体するだろう。大川隆法・幸福の科学総裁は、今から約20年も前に、こう指摘している。
「いま統合に向かっているEC(現EU)は、大きな破局を迎えるはずです。おそらく、とんでもない混乱になります。それがわからない今のヨーロッパ人たちは、どれほど知性が低くなっているのかと、私は憂えているのです。どのような形をつくっても、これはやがて崩壊します」(注)
まさに今この指摘が現実化している。議論すべきは、むしろ、いかにスムースにユーロを解体させるかであるべきだろう。