先週21日にニューヨークの円相場が75円78銭と戦後最高値を更新したが、10月24日発売の週刊エコノミストが「円高を活かせ」という特集を組んでいる。
以下、記事の注目ポイント。
- 円高を背景に、日本企業による海外企業のM&A(企業の合併・買収)が盛んになり、今年1月~9月は過去最高の水準となっている。
- 一方、海外企業の日本企業へのM&Aは低調。
- 日本は貿易サービス収支よりも、すでに所得収支の方が上回っている。つまり、貿易立国というよりは、投資立国になりつつある。
- 企業の生産拠点の海外移転によって、国内の雇用は減らない。むしろ増える。
特に重要なのは最後のポイントの「海外進出で国内雇用は増やせる」という部分だ。
確かに、生産拠点が海外に移れば、製造業の就業者数は減る。しかし、企業が生産拠点をグローバル展開するほど、本社機能は高度化し、その分、国内本社のホワイトカラー業務が増える。
実際に、この現象が本当らしいのは、完全失業率と海外生産比率が逆相関していることから伺える。
もちろん、これはマクロデータとして、そう言えるということだ。工場をリストラされた工員が、本社のホワイトカラーに転職できるわけではないから、実際には雇用のミスマッチが起きる。この混乱をどう収めるかが、政策上の課題となる。
従って、今後の課題は、「社会人の再教育」となる可能性が高い。以前、「学習する組織」というフレーズが流行ったが、今後は、パーソナルなキャリアにおいて「学習し続ける個人」であることが求められる。政策的には、転職市場と社会人の再教育市場の整備が必要となるに違いない。
いずれにせよ、円高を悲観的に考えるのではなく、前向きに受け止める発想が大事だ。(村)