政府が来年6月をめどに、沖縄県に対して、米軍普天間基地の移設先である名護市辺野古沿岸の埋め立て申請を行う方針を固めたと、16日付産経新聞が報じている。

現状では、政府が辺野古に移設したくても、沖縄県知事が沿岸の埋め立て工事を許可しなければ実現しない。今回固めた方針は、その埋め立ての申請を来年6月をめどに行うというもの。

だが、埋め立て申請の前には、もう一つやらなければいけないことがある。それは、大規模開発を行うときに事前に周辺環境への影響を調べる「環境影響評価(アセスメント)」である。政府は、この環境アセスの最終段階となる「評価書」を今年12月に沖縄県に提出するという。

つまり、政府が描く移設までのビジョンは、沖縄県に対して今年12月に環境アセスの評価書を提出し、来年6月に埋め立てを申請するという流れだ。

同紙は、政府がこの手続きを急ぐ背景に、米国の影響があると伝える。今後、米議会では、普天間基地とリンクする在沖縄米海兵隊のグアム移転経費の予算審議が本格化し、米上院は移転経費の全額カットを要求している。これに対し、日本政府は「アセスを前に進めなければ米政府が議会への説得材料を失い移転予算が凍結されかねない」(日米関係筋)との危機感を抱いているという。

また、今月25日に日本で開催予定の一川保夫防衛相とパネッタ米国防長官との会談でも、来年夏の埋め立て申請を前提に、年内に環境アセスの手続きを進めるよう強く求められると目されている。

野田内閣の移設を進める姿勢は評価できるが、米国側に急かされて動くのでは主権国家とは言えない。そもそも、日本国民の生命、財産、安全を守るためには、地政学的に重要な位置にある沖縄には基地が必要であり、辺野古移設は行う必要がある。野田内閣はそうしたメッセージを堂々と打ち出すべきだ。大義があってこそ、道が開ける。(格)