2011年11月号記事
日本の首相に就任したら、その政治家の守護霊を呼んで、今考えていることを点検するのが恒例になっている。このほど、野田佳彦首相の守護霊の霊言が『沈みゆく日本をどう救うか』として緊急発刊された。
松下幸之助氏は「古い」?
守護霊の考えは潜在意識に潜むその人の本音。松下幸之助氏が創設した松下政経塾1期生の野田氏のことだから、松下氏にさぞ思い入れがあるかと思いきや、 野田氏守護霊は「とっつぁんは古い」と斬り捨てた。松下氏が唱えた無税国家論についても、「高度成長期の人間だからさ」と、低成長の今の時代には合わないという認識だった。
これは野田氏の表面意識も同じことを言っている。月刊誌「Voice」10月号への寄稿では、「(提言した1970年代)当時から実行していれば、松下流の無税国家もいまごろ実現していたかもしれない」と述べている。
「古い」と言われた天上界の松下氏は黙ってはいない。同書で松下氏の霊は「わしの教えたことを、全然、守ってへんよ」「『無税国家論』を、もう一回、勉強してほしいな」と一喝した。
余裕資金の運用で消費税引き上げをなしにできる?
無税国家論はいくつかのパターンがあり得る。生前、松下氏は今で言うところの政府系ファンドのようなものを想定していた。
政府として余裕資金を運用して財政に振り向け、税金を安くする国は現にある。シンガポールは政府が投資運用会社2社を持ち、3000億~4000億ドルを株式や債券、不動産などで運用している。
過去20年間の運用利回りは1社が7・2%、1社が約15%。もしシンガポール並みの運用成績で100兆円規模を運用したら、少なくとも消費税率の引き上げは必要なくなる。
政府を株式会社化
天上界に還った後の松下氏は、無税国家論をさらに“進化”させて、政府の株式会社化を提言した (本誌06年1月号収録)。
2005.09.06
21世紀の無税国家論
国家株式会社の幹部には民間企業の社長や重役をスカウトするなどし、業務の簡略化・スピード化・サービスアップを図る。黒字化すれば株主の国民は配当がもらえる。
政府そのものを民営化して劇的に経営再建しようという狙いだが、その効果は国鉄民営化で実証されている。実現すれば、単年度黒字はそう年数がかからず達成できるだろう。
「政府の新しい事業は寄付金でやるべきだ」
実は生前の松下氏は、さらなる進化形を構想していたという。松下氏の経営思想を研究しているある専門家は、こう説明する。
「 幸之助さんは『政府の新しい事業は寄付金でやるべきだ』と言っていました。本当に必要でいい仕事をするなら、寄付金が必ず集まるという考え方です 」
つまり、慈善団体や宗教に対するように、国民が喜んでお金を出してくれるというわけだ。
大阪の道頓堀も淀屋橋も心斎橋も、江戸時代に私財を投じて公共事業を行った商人の名が今もそのまま使われている。これに倣って、現代でも個人の志を生かす方法はいくらでもある。
喜んでお金を出したくなる国家への挑戦
松下氏の無税国家論は、「所得から8割も9割も税金で取られ、働く気がなくなる税制は許せない」という義憤が出発点だ。その場合、国民にとって税金は逃れたいものでしかない。
無税国家論は、国民一人ひとりの心の向きを逆転させ、「そんないい事業をやるなら、喜んで投資したい、寄付をしたい」という積極的な気持ちを引き出すパワーがある。
松下氏のアイデアを「古い」などと言うのはとんでもない。むしろ未来型国家を創り出すチャレンジングなものだ。
霊言によれば、野田氏の過去世の一人は、江戸時代に大阪で米蔵の管理をしていたお役人さんだという。年貢の取り立てのように安易に増税を考えるようでは、松下氏の理想は到底理解できないだろう。
野田氏の守護霊は野田政権を1年もたせて前原誠司・民主党政調会長につなぐことをもくろんでいる。残念ながら、今のままでは半年ほどで「野田首相は古い」と切って捨てられることだろう。
(綾織次郎)