ベトナムで反中国デモ 南沙諸島の領有権巡り(ハノイ,ベトナム2011/6/5)

2011年8月号記事

ますます活発化する中国と北朝鮮の怪しい動きが、東アジアで火種を撒き散らしている。

中国は南シナ海、東シナ海の海洋権益の獲得に動き出した。5月26日、南シナ海のベトナムの排他的経済水域(EEZ)内で、中国の監視船が同国の資源探査船の調査用ケーブルを切断。

6月8、9両日には、計11隻の中国海軍艦艇が沖縄本島と宮古島の間の日本のEEZ内を通過。その後フィリピン東方海域まで進出しており、近く軍事演習を始めると見られている(6月17日現在)。

さらに中国は、2020年までに海洋監視隊を6千人、監視船を350隻増やす計画だ。

北朝鮮も強気の姿勢に出ている。5月30日に国防委員会が報道官声明で「韓国政府を相手にしない」との立場を表明。さらに6月1日、韓国からの南北首脳会談開催の秘密の提案を暴露し、「李明博政権をこれ以上相手にしない」と断言した。

その数日後には、韓国を挑発するかのように、朝鮮半島西側の黄海に短距離弾道ミサイルを1発撃っている。

同月13日には、韓国の金寛鎮国防相が、前回の核実験(2009年5月)から時間が経過していることから、北朝鮮が核の小型化・軽量化におそらく成功したとの見方を示した。

さらに、既存の舞水端里の基地より大きく、精巧な、東倉里の第二長距離ミサイル発射基地が完成を間近に控えているという。

また、中朝両国は、両国の西方の国境近くにある黄金坪と、東方の羅先特別市を共同開発・管理する契約に妥結。中国は日本海(中国名・東海)への出海権を得た。

中朝に対抗するベトナム・韓国

危機感のない日本

こうした中国・北朝鮮の動きに対し、周辺国は警戒感を強め、対抗手段を講じている。

中国船によるケーブル切断に対し、ベトナム外務省は、5月29日、「主権に対する重大な侵害があった」と発表。中国大使館に抗議して損害賠償を請求した。6月初めにシンガポールで開催されたアジア安全保障会議でも、この件について中国に激しく抗議している。

さらにベトナム当局は13日、中国などと領有権を争っている南沙諸島で実弾演習を行い、1979年の中越戦争以来、32年ぶりに徴兵令を公布した。

韓国も、黄海上の島嶼部を防衛するため、同月15日に「西北島嶼防衛司令部」を発足。島嶼部の軍備、兵力を増強する。

また、北朝鮮の長距離砲によるソウル攻撃の可能性に備え、北朝鮮の平壌を射程圏内に収める戦術地対地ミサイル(ATACMS)数基を、南北の軍事境界線付近に配備した。

だが、日本は危機感が足りないのか、手をくわえて見ているだけだ。自国のEEZ内を中国海軍が通っても、外務省は「公海上で、国際法上問題ない」としている。

英エコノミスト誌(電子版)によると、キャンベル米国務次官補が日本の民主党政権発足以降、「北朝鮮と中国の潜在的な脅威のために、アメリカと日本はこの50年間で最も危険な防衛環境にあるが、その現実は公には語られていない」と述べたという。だが、日本はまだその現実に気づくことさえできていない。