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11月26日に発生した香港の高層住宅火災を巡り、原因究明を求める声が高まる中、香港政府は市民への弾圧に乗り出しています。

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香港北部・大埔(たいほ)で26日に起きた高層マンション火災で、12月1日までに死者数は151人に上っており、依然として約40人が行方不明となっています。香港政府は、昨年から行われていた高層ビルの修繕工事に使用されていた竹の足場や防護ネットが耐火基準を満たしていなかったことを明らかにし、建設業者ら13人を過失致死や汚職の疑いで逮捕しています(1日時点)。

一方、火災した高層ビルの住民らは、建設請負業者が安全基準に違反した資材を利用している可能性について、1年半以上前から市当局に訴えていたといいますが、市当局はその声を拒否していたことが指摘されています(11月28日付米ニューヨーク・タイムズ)。

そのため香港内部では、安全管理や業者への監督が不十分だったとして、政府への責任追及を求める署名が1日足らずで1万人を超えるなど、市民の不満の声が高まっています。

これを受けて、香港政府は鎮火が終了した11月29日以降、市民への弾圧に乗り出しています。香港にある中国の出先機関「国家安全維持公署」は同日、反中分子らが「偽情報を拡散して香港政府への憎悪を煽っている」とした談話を突如として発表。「災害を利用して香港を混乱させる」行為は、反体制的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法(国安法)」などに基づいて罰せられると警告しました。

その直後、香港警察は政府の説明責任などを求める署名を呼び掛けていた男子学生(24歳)を反逆容疑で逮捕しました。さらに、火災があった高層ビル付近の広場で生活用品などを配っていた民間ボランティア団体を撤収させるなど、市民らの自発的な支援活動まで取り締まっています。30日には"扇動"を企てたとして元区議会議員の男性と、火災現場の近くにいたボランティアの女性が逮捕されました。

香港では2019年に民主化デモが続発し、2020年の国安法が施行されて以降、多くの民主活動家が逮捕されるか亡命を余儀なくされ、民主化活動が事実上不可能になっています。

しかし今回の火災を受け、香港内で「香港人は真相と正義を求める」「これは単なる事故ではなく、不公正な制度が生んだ悪しき結果です。許されることではありません」といった声が上がるなど、反香港政府・反中国共産党の機運が再燃しています。

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