アメリカでは、11月27日は感謝祭で、多くの人は休暇を取っているため、週を通じて街は静かになる。
その感謝祭の前日、26日に、ホワイトハウスのすぐ近くで、アフガニスタン(以下、アフガン)出身のラーマヌラ・ラカンワル容疑者(29歳)が、見回りをしていた州兵を襲撃する事件が起きた。司法省当局はテロとして捜査し、撃たれた州兵2人のうち1人は死亡、1人は重体となっている。
バイデン前政権下で、米軍が2021年夏にアフガンから悲惨な撤退をし、アフガン全土はタリバンに支配された。その後、バイデン政権は、アフガンでアメリカのために働いていたアフガン人に対して、"Operation Allies Welcome(OAW、同盟国歓迎作戦)"というプログラムを適用し、ほぼ無条件でアメリカに滞在することを許可。約9万人と言われるアフガン人がアメリカにやって来た。
実際に21年秋以降、配車サービスの「ウーバー」や「リフト」でも、アフガン出身の運転手が急増した。彼らと話すと、アフガンで米軍のために働いていたが、アフガンがタリバンに支配されたために、米政府から飛行機代や滞在費、車、携帯などを支給されてアメリカに来たと言う人が何名かいた。
トランプ政権当局者によると、狙撃犯はOAWのプログラムで一時的な移民資格を得ており、今年4月にアメリカで亡命を認められていたという(CNNやウォール・ストリート・ジャーナル、ロイター通信の報道)。
州兵襲撃事件を受けて、トランプ大統領は、バイデン政権下のアフガン撤退と移民受け入れ政策を非難し、バイデン政権下でアメリカに来たアフガン出身の移民全員を調査するよう命じた。
米国市民権・移民局(USCIS)と国土安全保障省(DHS)は、安全保障と審査手順の見直しが終わるまで、アフガン国籍の全てのビザ申請処理を停止し、バイデン政権下で承認された全ての亡命申請を再審査し、今後の亡命申請の手続きも全て一旦停止すると発表した。また、ベッセント財務長官は、不法在留外国人への税還付を停止すると発表した。
今回の州兵銃撃事件を契機に、アメリカの移民受け入れが制限される時代が来る可能性も議論されている。現状でも、移民受け入れ自体を一旦止めるべきだというトランプ氏側近もおり、ヴァンス副大統領も「アメリカ人の職を奪う」として移民受け入れ人数を大幅に減らすべきだと主張しているため、「優秀な移民は大いに歓迎する」と主張しているトランプ氏とは意見が一致していないことも報道されている。
州兵銃撃事件は、ニュースや保守系ネットワークなどを賑わしており、狙撃犯は、アフガンで、バイデン政権の中央情報局(CIA)のために働いていた人物だったとも報じられているが、議論がやや過激になってきている面もある。
共和党のトミー・ターバァヴィル上院議員は、「"イスラミスト"(政治的イデオロギーを強調するイスラム主義者)の移民を全面的に禁止し、現在アメリカに居住しているイスラミストを全員国外追放すべきだ」と主張し、共和党のランディ・ファイン下院議員も、バイデン政権時代の移民政策を非難し、「本来、入国を許してはならない移民(主として反米思想を持つイスラム主義者を指す)は即座に追放すべきだ」と声を荒げた(27日TVインタビュー)。
宗教的な対立が激化しつつある。























