《本記事のポイント》

  • 楽しめる世界観と雰囲気の醸成
  • そのためのポイントは?
  • 他産業分野への応用は可能

今回は前回に引き続き「東京ディズニーランドが好きな理由」の2番目と3番目に関して深掘りしていきたいと思います。

好きな理由の2番目は、「非日常の感じや雰囲気を味わえる」、3番目は「世界観や雰囲気が好き」となっていました。この2つの理由は密接に関係しています。

まずテーマ・コンセプトを設計する

この2つを合わせると、訪れる多くの来園者は、東京ディズニーランドのパーク内で提供される「非日常的な世界観に基づく雰囲気が好きだ」ということになるのではないでしょうか。

当然、東京ディズニーランドは、ウォルト・ディズニーが自らのイマジネーションの世界から生み出した数々のアニメキャラクターがそのまま登場しても、何ら違和感のない世界観で創られており、圧倒的なサービス精神に基づく運営体制も相乗効果となり、その中にずっといたいと思わせているわけです。

これは、統一された世界観に基づくテーマ・コンセプトが、あらかじめ確立されていることを意味しますし、物理的な環境演出においても、そのコンセプトに基づいて細部に渡って巧みな表現がされていることを意味します。したがって、なんとなく雰囲気が出ていればそれだけで良いというレベル感ではなく、徹底的に細部までこだわる演出がされているということになります。

ディズニーのノウハウ

このようなアプローチがなぜ可能なのかと考えると、ウォルト・ディズニーがハリウッド映画産業の中で自ら蓄積してきた総合芸術と言われる映画制作における「ストーリーテリング」「時代考証」「各種デザイン考証」「特殊効果による演出」等の数々のノウハウが、いわゆるアミューズメントパーク(遊園地)と言われる中に水平展開されて、テーマパークという新たな装置産業としていかんなく発揮されていることが大きいと言えます。

東京ディズニーランドの園内は、ビジュアル・イントリュージョンと呼ばれる外部環境を視覚的に見せない設計や、「ワールドバザール」から「アドベンチャーランド」等のエリアに分かれている中で、エリア毎にそのコンセプトに応じた環境演出が施されています。例えば、地面の色も違いますし、建築物のみならずピクトグラムと言われる男女トイレのマークも、そのテーマに沿ったデザインになっていますし、園内にかかるBGMもエリア毎に違いますし、BGMを流すスピーカーも環境に馴染むように巧みに設計されています。

多くの人に愛される世界観

ここまでをまとめると、多くの来園者に対して再び来園したいと思わせる世界観、多くの人に親しみやすく愛される世界観を先に構築できているかどうかがポイントになります。そして、その世界観に矛盾しない環境演出を、妥協を許さずに細部にまで施すということが極めて大切だということになります。この環境演出への徹底した配慮というアプローチは、他の産業分野にも十分応用できる重要なポイントではないでしょうか。

それでは、次回は、「東京ディズニーランドが好きな理由」の4番目「アトラクションが好き」を題材にして、そのディズニーの世界観に基づくアトラクション開発の秘密に迫ってまいりたいと思います。

(吉崎富士夫)

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