《ニュース》
厚生労働省は、脳死下での臓器提供の拡大に向けて、脳死が疑われる患者を、入院する病院から、「脳死判定」ができる別の病院へ転院搬送することを、年内に容認する方針を決めました(26日付読売新聞)。
《詳細》
脳死下で臓器提供を行う場合、医師による「脳死判定」が行われたのち、臓器が摘出されます。厚生労働省は、「脳死判定」を行い「脳死下の臓器摘出」ができる病院として、大学病院など高度医療を提供する約900の医療機関を指定しています。
しかし、それらの医療機関においても、脳死判定ができる医師や機材の不足から、実際に脳死判定を行ったのは3分の1の病院に限られ、脳死判定を行いやすい仕組み作りを求める声がでていました。
そうした状況を受け、厚生労働省は、患者が入院する病院での体制の不十分さによって、脳死判定を受けられない場合でも、転院先の病院での脳死判定と臓器提供を可能にする仕組み作りを2022年から検討してきました。「患者に人工呼吸器をつけて移動可能」「回復の可能性がないと搬送元、搬送先の両病院が認識」「搬送について家族が同意」など10項目のチェックリストを使うことを条件に、年内にも開始するとしています。
転院搬送が可能となれば、特に、離島や地方の患者の脳死判定・臓器提供を行いやすくなるといいます。例えば、鹿児島県・奄美大島の県立大島病院では、摘出した臓器を運ぶ手段が航空機に限られ天候に左右されていましたが、「状況に応じ都市部に患者を搬送できれば移植までを円滑に進められる」(中村健太郎・救命救急センター長)と期待を寄せているといいます(26日付読売新聞オンライン)。
2010年に、本人の同意がなくとも家族の同意のみで摘出ができるようになって以降、脳死下での臓器提供は急増しました。それでも、臓器移植を待っている人は、心臓809名、肺627名(2025年3月31日時点)などに上る一方で、提供者は131名(2024年度)で、「海外と比較しても遅れを取っている」という医療関係者の声が出ていました。
こうした中、厚生労働省はこれまで見送られてきた「虐待された疑いがある子供(本人の意に反して親が同意した可能性がある)」や「知的障害者」からも摘出する方針を決定しており、移植件数の拡大を急いでいます。
臓器移植の拡大を急ぐ動きはさまざまな深刻な問題を孕んでおり、踏みとどまる必要があります。
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