映画を愛する皆様、こんにちは。
秋が深まると、芸術に親しみたくなりますね。絵画、音楽、そして映画も、芸術の香り高い、美しく高尚なものに、心が郷愁を覚えます。
現在、全国の「午前十時の映画祭」実施劇場で公開中の『アマデウス』は、そんな季節に合う名作です。全編を通してモーツァルトの魅力溢れる旋律美と、18世紀ウィーンを彷彿とさせるプラハの市街や宮殿の壮麗な映像で、耳も目も贅沢に楽しませてくれます。ただしストーリーは単に楽しい訳ではなく、人間の嫉妬心をめぐるドラマであり、その裏に、キリスト教の限界という宗教的テーマを見て取ることができます。
(あらすじ)
ウィーンの宮廷作曲家サリエリの前に、若き作曲家モーツァルトが現れる。サリエリは自分がはるかに及ばぬモーツァルトの天才性を痛感し、その才能への嫉妬に駆られ、彼のような下品で非常識な人間に天才を与えた神の不公平さを呪う。サリエリが思い立った神への復讐は、ある周到なやり方でモーツァルトを破滅させることだった──。
なぜこの世に、天才と凡才の差があるのか。モーツァルトのミドルネームである「アマデウス」は、「神(デウスdeus)に愛された(アマAma)」という意味です。天才とは神に特別に愛された存在なのか。神の人間に対する愛は、多い少ないの差がある不公平な愛なのか。
サリエリのそんな疑問や理不尽な思いに、彼が信じているキリスト教は答えを与えてくれません。しかし仏法真理から見れば、そこに欠けているものはズバリ「転生輪廻」の思想です。大川隆法・幸福の科学総裁の著書『永遠の仏陀』から、人間の才能や能力の差と嫉妬に関する部分を、少し長いですが引用します。
「嫉妬の芽を摘むための考え方は、
これは、他の人に対する公平な評価にあると言ってよいだろう。
自分も、他人も、はるかなる昔に、
仏の子として、人間の生命を得た者であるが、
その時より、今日(こんにち)に至るまで、
幾千回、幾万回、
あるいは、それ以上の転生輪廻を重ねてきたのだ。
(中略)
やはり、それだけ多くの転生を経てきて、
人間には、
それぞれの魂の器というものが、
でき上がってきているのだ。
そうした、転生の過程を経てかたちづくられたる、
魂の器というものを認めない考えは、
これは、他人の努力を認めない考え方であり、
暴君のような、暗い心に支配されていると言わざるをえない」
人間に才能の差があるのは、過去の数多くの人生のなかで、各人が積み重ねてきた努力の量に差があるからである。そう考えて初めて、生まれつきの才能の差は不公平どころか、逆に「公平な評価」であり、神仏の愛の公平さの表れであることが納得できます。キリスト教では説かれていない転生輪廻という霊的真実こそ、サリエリが抱いたような疑問に答え、嫉妬の芽を摘むための真理です。『アマデウス』は、転生輪廻の思想の真実性を逆説的に感じさせてくれる宗教的ドラマであると言えます。
本作はモーツァルトの名曲に彩られた音楽映画ですが、脚本もある意味で音楽的です。天衣無縫な天才モーツァルトと、暗い心に支配される秀才サリエリという二人の個性の対比が、あたかもソナタ形式における第一主題と第二主題のように対立し、引き立て合い、絡み合って展開し、やがて手を取り合うように調和します。
その絶妙な調和が成し遂げられるのはクライマックスのシーンです。サリエリは、疲弊したモーツァルトをさらに衰弱させるべく、無理に「レクイエム」の作曲を進めさせようと、音符の書き取りの手伝いを申し出ます。ところが手伝ううちに、モーツァルトの口から泉の如く湧き出る楽想に感動し、本心から嬉々として手伝い始めます。ここは、この悲劇的ドラマにあって、サリエリが芸術創造のよろこびという善性に立ち返る、光が射す場面です。本作でアカデミー主演男優賞を受賞したサリエリ役のエイブラハムの演技をぜひスクリーンでご覧ください。
大川総裁は著書『なお、一歩を進める』でも本作に触れています。モーツァルトが大勢の前で、サリエリがその場にいると知らず、天才ならではの巧みさでサリエリをからかうように彼の真似をし、サリエリの憎しみを買う場面について、「天才でも自分の才能に酔ってはいけない」と戒めています。このエピソードは事実ではないと思われますが、たとえ天才であっても奢(おご)ることなく、凡才を馬鹿にすることもなく、逆に平凡な自分であっても他人の才能と比べて世を恨むこともなく、一人ひとりの魂の歴史の違いに思いを馳せ、公平かつ温かい目でお互いを見ていきたいものです。永遠の転生輪廻を貫く「原因・結果の法則」こそ、神仏の公平な愛である。そう信じて努力することで私たちは、自分もまた神に愛されている(Ama-deus)と実感することができるのではないでしょうか。
(田中 司)
『アマデウス』
- 【公開日】
- 2025年11月7日~12月4日
- 【スタッフ】
- 監督:ミロス・フォアマン
- 【キャスト】
- 出演:F・マーリー・エイブラハム トム・ハルスほか
- 【その他】
- 1984年製作 | 161分
公式サイト https://asa10.eiga.com/2025/cinema/1401/
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