『タイムマシン』『透明人間』『宇宙戦争』など、数々の大ヒット作を世に送り出し、SF小説における金字塔を打ち立てた、イギリスの作家、H・G・ウェルズ(1866~1946年)。
本欄の前編では、生前のウェルズの作品群が示す「驚異の先見力」の謎に迫った。
2025年8月18日付本欄「人物伝 H・G・ウェルズ アナザーストーリー(前編) 驚異の先見力はどこから生まれたのか── 霊体験にも見える作品群、人生を「一冊の本」として読む」参照。
ウェルズが、20世紀の初期に、世界大戦の惨禍とテクノロジー暴走の危機を見通したことを紹介した、本誌2025年9月号「現代の予言者 H・G・ウェルズ ─ 恐怖の未来と希望の予言詩」と合わせて読むと、その先見力に驚かされるだろう。
今回の後編では、「夢」の中で「未来を見る」ことや、「科学の進歩」が必ずしも人類を幸福な未来へと導くわけではないこと、などを指摘していた点に注目する。
「睡眠と覚醒の中間で、夢の中の物語を読む。それはつまり歴史なんだよ」
実際に、寝ている間に魂が肉体から抜け出し、霊界で「未来を見る」ことは不可能ではない。
「実は、一部の人には未来も明かされることがあります。未来のことが、まだ起きていないのに、起きているかのように見えます。『このままでいけば、このようになる』という未来はあるので、未来の世界を体験することもできるのです。その未来は、『いまの流れでいけば、このようになる』ということなので、『すでに起きている未来なのに、それを変えることもできる』という、不思議な不思議なことがありえます」(『信仰のすすめ』)
ウェルズの作品の中で、『来るべきものの姿』("The Shape of Things to Come" 邦訳『世界はこうなる』)における予知は興味深い。主人公にあたるレーブン博士が「睡眠と覚醒の中間」で見た「未来」を書き残した記録、とされている(※以下、出典は邦訳『世界はこうなる』明徳出版社)。
レーブン博士の友人が、雑誌の記事でダンという人物が夢を通して未来を予知していることを知る。その方法をレーブン博士に伝えると、博士は、それは「わたしが、ずっと前からやっていたことにすぎない」と答える。
それは、「ぐっすり眠っている時と、目のさめかけた中間に、飛び去ろうとする夢をひっつかむ方法」であり、具体的には「まくらもとにノートを備えて、眼のさめた瞬間に、夢を書きとめる」ことだった。そして、「睡眠と覚醒の中間で予知されたことは、明日とか来週とかのちっぽけな事件に止まらない、もっと長い間のことを含むのだ」という。
そしてレーブン博士は、こう続ける。
「わたしは数年前から……睡眠と覚醒の中間で……実際、ある本を読んでいた。実在しない本をだよ。まあ夢の中の物語とでもいうかね。(中略)そしてそれはつまり歴史なんだよ」























