《ニュース》
子供が生まれた地域によって、格差は生じるのか?──。アメリカでは長らく、貧困率の高い地域の格差を減らす取り組みが行われてきました。そんな中、ノーベル賞経済学者のジェームズ・ヘックマン氏らが、「子供の成功にとっては、親が何をするかの方が重要である」とする論考を米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(4日付電子版)に寄稿し、その風潮にノーを突き付けました。
《詳細》
生まれた場所と子供の人生の成功には、因果関係があるのか否か。日本では"因果関係がある前提"で、「教育格差」の是正を求める風潮が強まっています。アメリカでも日本に先行する形で、"機会の平等"の名の下に、貧困率が高い地域から貧困率の低い別の街への引っ越しを促す政策が行われてきました(Moving to Opportunity実験)。ところが「その成果はさっぱり」で、子供が大人になった時の雇用状況や教育の成果の改善にはつながりませんでした。
そんな中、米ハーバード大学の経済学者らは2018年に、1980年~2012年までの内国歳入庁のデータを使って、「成人期の成果が幼少期の居住地に依存している」と論じ、不平等の根絶などを訴える社会正義派を勢いづかせています。つまり、「アメリカンドリーム(または人生の運命)は郵便番号で決まる」という見方が強まったのです。
しかし今回、米紙に寄稿したヘックマン氏らは、その研究成果には重大な欠陥があると反論。実際には、「地域間の格差と見られるものは、親が主体的に選択した結果に起因している」と指摘しています。具体的には、人生の早い段階でより良い地域に引っ越す人々は、比較的裕福で教育水準が高く、家庭も崩壊していない傾向があります。彼らは自分と似た人々がいるより良い地域に移住した結果として、地域差が生まれたように見えているといいます(逆に、貧しく教育水準が低い人はより貧しい地域を選んでいる)。
さらに、地域の環境要因を著しく過大評価するあまり、家庭生活の決定的な役割を軽視している問題もあるといい、"郵便番号運命論"はナンセンスだと切り捨てています。
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