理化学研究所と富士通が共同開発中のスーパーコンピューター「京」が、スパコンの計算速度世界ランキングで1位に輝いた。国産のスパコンが世界一を獲ったのは2004年「地球シミュレータ」以降7年振り。京は毎秒8162兆回の計算を達成し、2位の中国製「天河1号A」の毎秒2566兆回を3倍以上引き離す圧倒的な高性能を見せた。各紙で報じている。

スパコンは開発競争が激しく、日本は世界一の座を明け渡してからの7年間低迷が続いていた上、09年の事業仕分けでは、理研や文科省が蓮舫行政刷新相に「2位じゃダメなんでしょうか」と問い詰められ、一時は計画廃止の危機にまで瀕した。

しかし、これに対して大勢の著名な科学者たちが猛反発し、結局、予算が復活された経緯がある。理研の野依良治理事長は20日の会見で「やっぱり、科学や技術はトップを目指さないといけない」「日本は科学技術を振興することが生命線だと思う」とコメント。蓮舫担当相も20日、「関係者のご努力に心から敬意を表したい。ナンバーワンになることだけが自己目的化するのではなく、国民の税金を使っているので、次はオンリーワンを目指して(中略)、将来の明るい夢に具体的につなげていくかという努力に期待したい」と述べた。

スパコンの応用分野は、高精度な気象・災害予測シミュレーション、新素材開発、製薬など幅広い。また、米軍は軍事シミュレーションに欠かせない技術として、スパコンの開発に力を入れている。

科学技術の進歩は、さまざまな産業がさらに発展し、新たな付加価値を生み出していくための原動力といえる。それは富を生み出すだけでなく、災害対策や国防などの面でも欠くことのできないものだ。

「京」の開発費は約1120億円。スパコンに限らず、航空宇宙開発やリニアなど、政治家が科学技術の研究に投じる予算を投資と見るか、それとも浪費と見るかによって、国の発展が大きく左右されるのではないだろうか。(雅)