トランプ米大統領が就任直後から力を入れてきた大型減税法案(正式名称は「一つの大きな美しい法案」[One Big Beautiful Bill Act])は、下院議会で徹夜の審議の後、5月22日の朝7時前に可決され、一斉に速報が流れた。

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5月22日朝に法案が可決されると即座に下院共和党がXに投稿した画像。

この法案に対しては、下院の共和党内部で財政規律派(Fiscal Hawk)の議員から強い抵抗があり、マイク・ジョンソン下院議長が目指していた期日である5月26日の戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)までの可決は厳しいと見られていた。

しかし、トランプ氏自身が、異例なことに20日に下院共和党の会議に参加して、反対する議員を一人ひとり説得(ホワイトハウスに呼んでまで)。その結果、法案は期日より前に、下院で「賛成215、反対214、棄権1」という僅差で可決された。トランプ氏と共和党にとっては非常に大きな快挙として、保守系の間では、祝福のメッセージが溢れた。

この法案には、第1次トランプ政権で導入した所得減税の延長、チップや残業代への課税免除(トランプ氏の大統領選公約の一つ)、アメリカ製自動車の購入ローン金利の税控除などの減税による経済成長策と同時に、対中政策を念頭に置いた国防費の増額や、不法移民対策予算(国境警備隊の強化、不法移民強制送還の財源など)の増額が盛り込まれた。政府支出削減策としては、バイデン前政権によるグリーンエネルギー優遇策の廃止や「メディケイド(低所得者向け医療保険)」の受給資格の厳格化(不正が多かったため)などが含まれている。

トランプ氏は、減税と同時に規制緩和による経済成長を目指す。また、最終的には「法人税を15%まで下げる」ことも目指しており、さらに、今回の法案には完全に反映されていないが、「メディケイドには手をつけない」などとも発言し、低所得者に対して配慮している。

法案は下院で可決後、上院では2カ月以上かけて審議される予定だ。上院共和党では、政府支出の削減をさらに進める方向に修正されると見られている。共和党は、法案が夏までに上院で可決され、トランプの署名で成立することを目指している。

これに対し民主党は、社会福祉や環境問題の予算削減に対して反対し、法案そのものを批判している。

文化や宗教の溝を埋めようと熱心だったイスラエル大使館職員が射殺される

5月21日夜、ワシントンD.C.の中心地にあるユダヤ博物館の出口から出た直後に、20発以上の弾丸が撃ち込まれて、男女2人のイスラエル大使館職員が射殺された事件は、トランプ氏の中東訪問でネタニヤフ首相を外した中東外交政策が話題となっていただけに、さまざまな意味で衝撃が大きく、多くの情報と意見が飛び交った。