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中国政府は5月30日、香港で、国家間の紛争などを調停で解決する「国際調停院」の設立に向けた署名式を開きました。

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署名式には王毅共産党政治局員兼外相が出席し、演説で「国際調停院は国際紛争の友好的な解決を促進し、調和のとれた国際関係を築く」「グローバル・サウスの国際統治における発言力を高めよう」などと語りました。

王氏は32カ国が署名したことを明らかにしています。署名国はエチオピアなどのアフリカ諸国、ソロモン諸島などの太平洋島しょ国、インドネシアなどの東南アジア諸国連合加盟国など、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて、中国と友好関係にある国です。

国際調停院は、早ければ今年末に設立、業務開始となる見通しで、本部は香港に置かれます。国家間の紛争だけでなく、投資家・外国企業と国家間の紛争や、企業間のビジネス紛争も扱うなど、その対象は広範囲に及びます。

カシミール地方をめぐってインドと対立を深めるパキスタンのムハンマド・ダール副首相兼外相も、署名式で演説し、「国際調停と外交分野における新しい時代の始まりだ」「アジアインフラ投資銀行(AIIB)を想起させる画期的な動きだ」などと称えました。

国家間の紛争を解決するための国際機関には、オランダ・ハーグにある国連機関の国際司法裁判所(ICJ)や仲裁裁判所があります。また、人道に対する国際犯罪などを犯した個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)もあります。これらが扱うのは「訴訟」で、法的拘束力を持つのに対して、「調停」は当事者間の話し合いによって和解を促すもので、法的拘束力はありません。

しかし、「調停の方が中国に有利な結果を導きやすい」として、警戒する見方も出ています。

中国は、2016年に仲裁裁判所が示した南シナ海をめぐる判決に大きな不満を持ってきました。仲裁裁判所は南シナ海のほぼ全域に及ぶ中国独自の境界線の法的根拠を否定し、「南沙海域に国際法上、認められる島は存在しない」とする判決を下しました。中国はこの判決を受け入れておらず、これが国際調停院設立の一因と言われています。

香港政府のトップである李家超(ジョン・リー)行政長官は27日の記者会見で、「(国際調停院は)ICJなどと同等の存在になる」と語っています。

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