全国公開中
《本記事のポイント》
- 人身売買がはびこるカンボジアを教育の力で立て直す
- 救世主イエス・キリストを人生の導きとした生涯
- 多くの人たちの魂の中に生き続けるという喜び
2022年に71才でこの世を去ったOKAこと栗本英世(くりもとひでよ)。カンボジアで人身売買を無くそうと悪戦苦闘した同氏の足跡を15年以上に亘って追いかけたドキュメンタリー映画である。
1980年代後半、日本から東南アジアへ飛び出した栗本は、ラオスやタイの山岳地帯で売られる子供もを助けようとするが、親が立ちはだかり失敗が続いた。
やがて内戦終了後のカンボジアにたどりついた彼は、人々から「オカ」(カンボジア語でOKAはチャンスの意味)の愛称で親しまれ、難民が暮らす地雷原の村々で現地の人たちとともに地雷撤去に奔走する一方で、孤児たちを人身売買から守る「こどもの家」を開設し、識字教育をするため草葺きの寺子屋づくりを始める。
監督は、民俗行事や芸能についての記録映像を制作してきた牧田敬祐。シンガーソングライターの友部正人が挿入歌を提供。東京ドキュメンタリー映画祭2024にて長編部門グランプリを受賞した。
人身売買がはびこるカンボジアを教育の力で立て直す
この映画は、内戦が終了したばかりのカンボジアにたどりついた栗本が、タイから帰国した難民が暮らす地雷だらけの村で、村民と一緒に手掘りで地雷を除去し始める姿を伝える。
同時に、栗本は、難民の子供達をターゲットとする人身売買と闘うために、親のいない孤児たちを守る「こどもの家」を開設し、地雷原の村に識字教育をする草葺きの寺子屋づくりに取り組む。
栗本が建てた寺子屋は20校近くにのぼり、現在はその多くがカンボジアの公立学校へと衣替えしているという。未だカンボジア政府が児童教育にまで手が回らない時期に、いち早く寺子屋形式で貧しい人々に教育の機会を与え、知識の力で人身売買をストップさせようとした栗本の行動力には驚かされる。
映画には、かつて栗本の寺子屋に通った子供たちが立派に成人し、社会を支えるリーダーになっている姿も描かれており、口々に栗本に対して感謝を述べる姿には、胸が熱くなる。
インドのアウトカーストの子供が喜捨をもらい、物乞いをして生きていけるようにと手足を切断されるような構造が当時のカンボジアにも存在し、それが支援する側の責任であることを栗本は自覚して、人々の自立を促すような支援活動を模索し続けた。
それが、何も持たずに「手ぶらで」現地に入り込み、真の自立に向けて寄り添うという栗本の援助スタイルにつながっていったのである。
大川隆法・幸福の科学総裁は著書『教育の法』の中で、子供たちに教えるべき価値観として「勤勉」を挙げ、次のように指摘している。
「世の中で評価されるような仕事を為していくためには、どうしたらよいでしょうか。学生時代に何を教えたら、世の中に出たときに、評価される仕事ができるようになるのでしょうか。」
「学生時代の子供たちに、どうしても教えてほしいことは、『勤勉』ということの大事さです。勤勉という言葉は古い言葉になるかとは思いますが、『勤勉に努力する者は、やはり人から認められる』『勤勉に努力する者には、必ず道が開ける』ということを、しっかりと教えてほしいのです」
救世主イエス・キリストを人生の導きとした生涯
また映画では、滋賀県近江八幡市の貧しい母子家庭に育った栗本の生い立ちも描かれている。14歳の時に母親が自殺未遂を企て、衝撃を受けた栗本は近くの教会に通い始め、一生をキリスト教信仰に捧げていた。
栗本は、国交回復直後の中国で聖書を配布する伝道活動を行ったり、日本のヤクザを対象にした更生支援活動に参加したりと、若い頃から社会の底辺で苦しむ人々に手を差し伸べることに宗教的使命感を感じていたようだ。
映画の中には、生前の栗本のインタビューが随所にちりばめられているが、「イエス・キリストは伝道活動を3年間で終えられた。私は30年以上伝道に苦しんでいるけれども、時々イエスが羨ましくなる」と淡々と語る朴訥な姿は、信仰に生きる者の強さを浮き彫りにしている。
多くの人たちの魂の中に生き続けるという喜び
救世主イエス・キリストの人生を手本とし、少しでもその愛の精神を体現しようとした栗本。
映画では、若き日の栗本がハンセン氏病患者の世話をする中で、その苦しみを"我がこと”として引き受けるべく、患者の膿を自らの腕の傷口に擦り込んだというエピソードも紹介されている。
その一途な生き方について、学生をカンボジアの「こどもの家」に送り込み、共にボランティア活動を行った、神戸学院大学教授の前林清和氏は次のように語っている。
「その生き方は、あまりにも純粋であり、それゆえに苦悩の連続であったが、周りの人たちの心を温かくし、亡くなってからも多くの人たちの魂の中に生き続けている。私は、このドキュメントが次世代の支援活動にきっとつながると確信している」(映画ホームページより)。
かつてカンボジアの「こどもの家」で栗本とともにボランティアに励んだ人々が、彼との出会いによって、自分たちが人間として大きく成長できたことに深く感謝しているのがとても印象的だ。
「自分が死んでから後に、どのような人であったと言われたいのか。
そうしたことを、自分自身に問うてください。
そして、考えてください。
その問いへの答えが、あなたに求められている勇気なのです」(『勇気の法』より)
内戦と貧困に苦しみ続けてきたカンボジアの人々から向けられる笑顔に無上の幸福を感じていた栗本。宗教的な奉仕と途上国の人々の真なる自立を模索し続けた人生は、援助のあるべき姿を考える一助ともなることだろう。
『OKAは手ぶらでやってくる』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 監督:牧田敬祐
- 【配給等】
- 配給:ミカタ・エンタテインメント
- 【その他】
- 20024年製作| 90分| 日本
公式サイトhttps://www.haising.jp/movie-1/
【関連書籍】