2025年6月号記事

第12回

釈量子の宗教立国への道

幸福実現党党首が、大川隆法・党総裁による「新・日本国憲法 試案」の論点を紹介する。

釈量子

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

第八条

最高裁長官 公選制の可能性

新・日本国憲法 試案〔第八条〕

裁判所は三審制により成立するが、
最高裁長官は、
法律の専門知識を有する者の中から、
徳望のある者を国民が選出する。

新・日本国憲法 試案
『新・日本国憲法 試案』
大川隆法著
幸福の科学出版
幸福の科学出版で購入
Amazonにて購入

憲法試案〔第八条〕は司法に関する条文です。裁判制度は現在と同じ「三審制」をとりますが、注目すべきは「最高裁長官の公選制」です。

現在、最高裁長官を選挙で決めている国はありませんが、アメリカでは多くの州で最高裁判事を公選しています。選挙は中間選挙や大統領選と同時に行う州が多く、オハイオ州やテキサス州では長官も決めています。この「裁判官選挙」の歴史は古く、第7代ジャクソン大統領の時代に、白人男性の普通選挙導入などの流れのなかで推進されました。

立候補できるのは、弁護士、検察官、ロースクールの教授など、法律の実務経験を積んだ人です。日本のように、退官まで裁判官として勤め続ける"キャリア裁判官制度"ではなく、人事に市民感覚を反映させる仕組みになっています。

日本の最高裁長官任命は不透明

司法に民意を反映させる方法として、日本では罷免したい最高裁判事にバツをつける「国民審査」があります。しかし、1949年の制度開始以降、罷免された人は一人もおらず、国民のほとんどは、裁判官の名前も実績も知らない状況です。「『実際上、最高裁の裁判官の資質が判定できない』というのが現実」です(*1)。

また最高裁長官は、形式上は内閣が指名し、天皇が任命することになっていますが、実際は、現在の長官が後任者を内閣に推薦するという「指名人事」が行われています。三権のうち重要な機能のトップが、国民の遠いところで決められている状況は、透明性に欠けるとも言えます。

そこで大川総裁は、「最高裁判所のトップになる人を選挙で選んでもよいのではないか」「要するに、官僚的に出世して最高裁長官になるような制度にはしないつもりです」と提言しているのです(*1)。

選挙による「司法の政治化」を懸念する声もあります。しかし大川総裁は「国民による投票は最高裁長官だけでよいと思います。(中略)トップ一人が選挙で選ばれるだけでも、裁判官全員がビシッと引き締まります」と述べています(*1)。

この「公選制」は、〔第七条〕が提言する、「大統領令と国会による法律が矛盾した場合は、最高裁長官がこれを仲裁する」という新たな役割も、念頭に置いたものです。

国政に関わる重大問題に際して裁定をするには、単なる法律知識や、キャリア裁判官としての経験だけでは不十分です。特に、国際情勢が混沌化するなか、どう国政のかじ取りをしていくかを見極めるには、「大局観」も必要です。

(*1)大川隆法著『新・日本国憲法試案』(幸福の科学出版)

22089_01
最高裁判所の大法廷(画像:w_p_o - stock.adobe.com)。

裁判員制度に見る最高裁長官の不徳

そして何より重要なのは、条文にも記された「徳望」でトップを選ぶという理念です。

裁判所で出世した人が有徳とは、必ずしも限りません。

例えば2009年、国民の司法参加を進める「裁判員制度」が導入された際、大川総裁は「民間人を巻き込むことで、判決内容について言い逃れをする、ずるい発想であり、プロ失格の制度」と批判しました(*2)。この制度導入を主導したのは、第11代最高裁長官の矢口洪一氏ですが、元最高裁判事の泉徳治氏が著書で矢口氏の"本音"について驚きの事実を語っています(*3)。

「これは独特の政治感覚ですね。死刑判決が再審で無罪になった事件が四件もあり、職業裁判官は何をやっているのかという話になりましたね。これが陪審裁判だと、国民が判断したことになるので、仮に再審で無罪となっても(中略)裁判官は批判をかわすことができるという政治感覚です」

官僚としては老獪と言えますが、これでは大統領と国会の諍いを調停するという大任はとても果たせないでしょう。

そもそも、「神ならぬ身で人を裁く」厳粛さの前に立つ司法のトップには、「神仏の心を心とし、正しさをどこまでも探究する」という姿勢が求められます。こうした精神性の高みを国民としても求めていく──というビジョンが、〔第八条〕には込められています。

(*2)大川隆法著『政治の理想について』(幸福の科学出版)
(*3)泉徳治著『一歩前へ出る司法』(日本評論社)