《ニュース》

文部科学省はこのほど、2026年4月から高校で使用される教科書の検定結果を公表しました。その中で夫婦別姓やLGBTQの記述が増えている一方、推進のメリットばかりが紹介され、特に「子供の視点」から見た問題点の記述が少ないことが指摘されています。

《詳細》

今回、検定結果が公表されたのは、2026年度から主に高校一年生が使用する教科書で、11教科236点が合格しました。

この中で、家庭科ではすべての教科書が「選択的夫婦別姓制度」を取り上げています。2020年度の検定では公民と家庭科の教科書計20点で記述がありましたが、今回は計24点となりました。そのうち「子供の姓」をどちらに合わせればいいか混乱する問題についての言及は、計11点にとどまったといいます。

例えば、帝国書院の教科書は、判例を引用しながら「女性が姓を変えることによる支障」などを掲載するのみです。同社の編集担当者は産経新聞に対し、「子供への影響については、授業の中で深めてもらえればいいのではないかということで、問題の投げかけレベルにとどめた」と語っています。実教出版の教科書も、「結婚すると女性が男性の姓に変えるケースが圧倒的に多い」として、女性の不便・不利益を説明するなどにとどまり、「子供の姓」については触れていません。

文科省は「(子供の姓を)取り上げるかどうかは、他のさまざまな論点と同様にあくまで発行者の判断になる」としています(3月25日付)。

産経新聞は翌26日付の社説で、「選択的夫婦別姓を巡り国民の意見は分かれている。課題を含めて記述しなければ公正・中立な教科書といえるのか疑問だ。生徒に偏った考えを植え付けることにならないか憂慮する」と指摘しています。

また、LGBTQに関する記述についても問題視されています。例えば、開隆堂の教科書は、「トランスジェンダー男性が、親友のゲイから精子提供を受け、女性パートナーが出産し、3人親として2人の子供を育てている」という家族を紹介。子育てをする親側の悩みを挙げながら、「パパやママという役割に縛られず、それぞれの子育てをすればよい」と考えるようになる経緯を記述しています。

一方、子供が成長過程で抱くかもしれない困惑や悩みについての記述はなく、開隆堂の編集担当者は、「自由に子供に考えさせてもいいのではないかというところでとどめている」と回答しているとのことです(3月25日付)。

近年、選択的夫婦別姓の導入やLGBTQの権利拡大の動きが加速する中で、「子供の視点」が欠落していることに対し、懸念や批判の声が相次いでいます。こうした中、産経新聞は今年1月、約2000人の小中学生を対象に調査しました。「新しい法律で家族が違う名字になったら」との問いに対し、反対が49.4%と答え、賛成の16.4%を大きく上回っています。また、自分が結婚するときに「別々の名字にしたくない」との回答が59.9%に上っています(「別々の名字にしたい」は13.6%)。

また、NHK放送文化研究所が2022年に行った「中学生・高校生の生活と意識調査」によると、「結婚したら、名字をどうしたいか」との問いに対し、「名字を変えずにそのままでいたい」と回答した「女子」はわずか6%にすぎませんでした(「自分の名字を相手の名字に変えたい」は24%)。

こうした問題が論じられる際、引き合いに出される世論調査は主に大人を対象にしており、子供を対象にした調査はほとんど見られません。しかし、上記の調査からも分かるように、多くの子供が「夫婦別姓」について否定的・懐疑的な見方を示しています。

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