イランの核実験が近いという憶測が飛び交っている。

先月リリースされた国際原子力機関(IAEA)の最新データによれば、イランのウラン精製のペースは2月の時点に比べて17%増加。ここ半年の間に56.7キロのウランを20%レベルに濃縮し、核兵器に使われる90%レベルに向けて、精度を高めているという。

IAEAのデータに基づいて、ランド研究所のグレゴリー・ジョーンズ氏は2日にまとめたレポートで、現在のペースでイランがウランの精製を続ければ、2カ月以内に核兵器製造に必要な核燃料を得ることができると試算した。

4月にイラン革命防衛軍のホームページに発表されたレポートには、「イランが初めて核実験をする次の日は、普段と変わらない日だろう」という文言があり、これを近いうちの核実験をほのめかすものと受け止める見方もある。

本欄でも述べてきたように、イランが仮に核武装に成功すれば、中東諸国の力関係に激震が走ることになる。

9日付の米紙ニューヨーク・ポストでは、ジャーナリストのアーサー・ハーマン氏が、「イランの核武装は地域の軍拡競争を加速させ、サウジアラビアやエジプト、ヨルダンさえも核武装に向かわせるだろう」と指摘した上で、アラブ諸国がイランの核の力の下に結束(バンドワゴン)し、イスラエルの孤立が進むと述べている。

イランが核を持つことになれば、核抑止という文明実験の新たなケースとなる。核報復による自国の壊滅を恐れて、双方が攻撃を慎むことで核兵器が平和を守るというのが格抑止の理論(相互確証破壊)だが、イスラエル殲滅を掲げるイランがどのような行動を取るのかは不透明である。

イラン・イスラエルによる核戦争を防ぐことを目指すなら、イランが開戦に利益を見出すことのないよう、イスラエルの過度の孤立と包囲を回避することが求められる。