2024年には、いわゆる「働き方改革関連法」によって、4月から建設業や運送業などにも、時間外労働に原則年間360時間の上限が設けられました。

2024年12月号記事「働かないことを奨励する社会はどこかおかしい」では、この規制が労働力への依存度が高い「労働集約型産業」である建設業や運輸業、そして関連する業種に大きなダメージをもたらしていることを取り上げています。

それでは、「働き方改革」の現場にいる人々は何を感じているのか。その実情を伺うと、国が進めている政策と、働いている人々の意識との間にある大きなギャップが見えてきました。

番外編の第一回目は、「運送業の働き方改革で『荷主』『運送会社』『ドライバー』にかかる負担」について。

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「2024年問題」は、労働力への依存度が高い「労働集約型産業」である建設業や運輸業、そして関連する業種に大きな影響をもたらしています。帝国データバンクの調査では、2024年上半期に「人手不足」が原因で倒産した事業者のうち、45.4%が「建設・物流」の2業種で占められており、そのうち従業員10人未満の企業が8割となりました。

また、「働き方改革」に伴う労働時間の制限により、2030年には19年比で34%分の荷物が運べなくなることが危惧されています。これは、個々の会社にとっても請け負える荷物が激減することとなり、収入も減少するため、死活問題です。

そうした中、従来と同じ量の荷物を運ぶために、トラックを大型化して、一度に運べる量を増やす取り組みも進んでいます。大型・中型免許の受験資格は従来、21歳以上で普通免許を3年以上保有している必要がありましたが、22年以降は「19歳以上で普通免許を1年以上保有」へと引き下げられ、緩和されました。

こうした動きの中で、日経新聞は2024年10月31日付の1面で「トラック輸送力は落ちていない」と報道。特に大型の「特大車」が6%増え、複数の荷主の荷物を一台のトラックで運ぶ「共同輸送」が進んでいること、また、一台の車に2つの荷台をつないだ「ダブル連結トラック」による中継輸送が進んでいる、としました。

ところが、全日本トラック協会は当日、この記事について「簡単な話ではない」と反論。一部の取り組みを取り上げて、問題が生じていないかのような印象を与える記事は、「誠に遺憾」だとしています。

それでは、何が「簡単な話ではない」のでしょうか。