全国公開中

《本記事のポイント》

  • 欲望にブレーキをかけることの大切さ
  • 透明な心こそ、望むべきもの
  • 主人公・紅子に見る、菩薩の救いと導き

日本のみならず、アジア各地や中国、ロシアなどでも大人気となっている児童小説『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』シリーズを天海祐希の主演で実写映画化。

堂々として何事にも動じない、不思議な駄菓子屋の女主人・紅子が、人々の願いを叶え、欲望につけ込む悪しき存在と対決する姿が描かれている。

新米教師の等々力小太郎は、赴任した小学校の子供たちから不思議な駄菓子屋「銭天堂」の噂を聞く。怪しげな店主・紅子が選んでくれる駄菓子を食べれば願いがかなうが、食べ方や使い方を間違えると大変なことになるのだという。

やがて、銭天堂の駄菓子を買ったと思われる人たちの様子がおかしくなり、小太郎が密かに思いを寄せる雑誌編集者・相田陽子も暴走してしまう。

そんな中、小太郎はもう一軒の駄菓子屋「たたりめ堂」の存在に気づく。その店では店主のよどみが人々の悪意を集めてつくった駄菓子を売っていた。小太郎は大切な人たちを守るべく、紅子とともによどみを追うが……。

欲望にブレーキをかけることの大切さ

本作の魅力は、駄菓子屋の女主人紅子が提供する不思議な駄菓子を通じて、現代の子供たちに心の善悪を教え、欲望にブレーキをかけられないことが転落への道であることを教えている点だろう。

映画では、小太郎が密かに思いを寄せるファッション雑誌編集者・相田陽子が、SNSで見栄えがするような流行ファッションを追い求めるうちに、物欲が止まらなくなり、高級品を買い漁って暴走していく姿がリアルに描かれていた。

そして、人々の欲望を煽って破滅に追い込む悪しき存在も登場する。小学生に人気のある児童小説で、こうした欲望の過ちを教えることは、とても貴重だ。

大川隆法・幸福の科学総裁は、著書『繁栄の法則』の中で願望実現の注意点を次のように指摘している。

経済的繁栄、事業の成功、素晴らしい結婚、こうしたことを願うのは、まことによいことです。その結果、物質に翻弄されることのないように留意して、あくまでも、みずからの霊性が豊かになる方向で、希望の実現をなしとげていってほしいと思います

人間の本質は霊魂であり、あの世の世界から、魂の修行のために、この世に生まれ変わるという"転生輪廻"を何千回、何万回以上も繰り返している。

肉体に宿ることで欲望に翻弄されながらも、"自らの霊性にとって何が正しいか"を選択していけるかどうかが、一人ひとりの未来を形づくっている。そうした人生の真実を噛み砕いて描いているところに、この映画の特徴があると言えるだろう。

透明な心こそ、望むべきもの

今回の映画化では、原作に登場する「虹色水あめ」のエピソードが中心に据えられている。

脚本を担当した吉田玲子氏はその理由について、「原作を読んだときから特に印象に残っていたお話だったんです。ふたりの女の子が違う駄菓子を買い、『自分の心を綺麗にしたい』と願った子がふたりの関係を変えていく。それは、銭天堂の駄菓子のあり方を端的に表していると感じましたし、読後感も爽やかだったので、ぜひ映画でも取り上げたいと思いました」(パンフレットより)と語っている。

自分の心を透明で清らかなものにしたいと願うことは、嫉妬の苦しみから逃れ、平静な心を取り戻したいということであると同時に、死後に地獄に堕ちることなく、天使や菩薩が住む天国の世界に還り、また、自らもそのような尊い存在へと向上していきたいという宗教的な願いでもあるだろう。

大川総裁は著書『地獄に堕ちないための言葉』の中で、平静な心と天国の存在について、「平静心が必要である。いつも、守護・指導霊が、天上界から地上の自分を見守っていることを信じることが大切だ」と指摘しているが、まずは心の持ち方そのものが、死後の世界の行き先を決めると信じて生きることが、極めて大切だということだ。

不思議な駄菓子によって、嫉妬心を克服するきっかけをつかみ、平静な心を守ることの大切さが描かれている点は、子供たちにとっても、嫉妬や妬みで心を汚さないための、分かりやすい教訓になるのではないだろうか。

主人公・紅子に見る、菩薩の救いと導き

本作の一番の魅力はやはり、駄菓子屋の女主人・紅子という年齢不詳の謎めいたキャラクターの存在だ。

今回は、天海祐希が特殊メイクを駆使して、ふくよかで威厳のある紅子を好演しているが、迷える人々に人生の導きを与え、人を惑わす悪しき存在を懲らしめるその姿は、観音菩薩と閻魔大王の要素を併せ持ったようにも見える。

人々に救いと導きを与える菩薩という存在について、大川隆法総裁は著書『釈迦の本心』の中で次のように語っている。

菩薩の本質のなかには、利他、愛があるわけですが、その愛の奥には、『世の中をよくしよう』と決意し、不退転の気持ちで、うまずたゆまず道を歩んできた者に特有の強さがあります。『堅忍不抜』という言葉で呼んでもよいでしょう。

すなわち、『人びとを救い、人類を光明化し、世界をユートピア化する』という理念のために、長い年月、うまずたゆまず山道を歩んできた人が、菩薩として活躍しているのです

紅子の、恰幅がよく、何事にも動じない姿は、菩薩特有の不退転の気持ちを体現しているとも言えるし、こうした児童小説が、世界各地で大ヒットするという現象自体、世界の人々の心に、"仏神の御使い"としての菩薩や天使の存在を信じる心と、その導きを求める根強い願望があることの表れでもあるだろう。

本作品では、心の中の願望をきっかけとして、"人生の選択"が成功と転落の分かれ道を作っていることが、子供にも分かるように丁寧に描かれている。

欲望にブレーキをかけることの大切さ、コツコツと努力し、清らかな心で生きることの意味、そして、天使や菩薩の導きを願う心の大切さが描かれているこの映画は、子供たちにとって、善悪を峻別する智慧を育むためのヒントともなるのではないだろうか。続編が楽しみだ。

 

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』

【公開日】
全国公開中
【スタッフ】
原作:廣嶋玲子 jyajya 脚本:吉田玲子
【キャスト】
出演:天海祐希ほか
【配給等】
配給:東宝
【その他】
2024年製作 | 103分 | 日本

公式サイト https://zenitendo-movie.jp/

【関連書籍】

いずれも 大川隆法著 幸福の科学出版

【高間智生氏寄稿】映画レビュー

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