アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
中国では、年末間近、大きな無差別殺傷事件が立て続けに起きている。
11月11日夜、広東省珠海市香洲区スポーツセンターのオフロードで「北京汽車」BJ40のRV車が暴走し、少なくとも35人が死亡、43人が負傷した(*1)。
(*1)2024年11月13日付『中国瞭望』
裁判所への抗議の意があったのか
車を運転していたのは樊維秋という62歳の人物。RV車を1週間前に購入し、暴走の前日に引き取りに来たという。
樊維秋は結婚生活が破綻していた。妻は「暴走族」グループの男と知り合い、不倫関係に陥ったというネット上の情報もある。結局、元妻と離婚し、財産分与に関わる裁判が長い間、行われていた。最終的に下された判決に納得がいかず、強く憤慨。特に、元妻とその愛人に関わる件で裁判所に不当な扱いを受けたと考え、加害者は極端な手段に訴えたという。
あるネットユーザーが「事件の犯人は共産党幹部だ」と投稿した(*2)。この人物は「樊建国」というのが本名で、広東省珠海市金湾区の党書記兼退役軍人事務局長だという。真偽は不明だが、もし事実だとすれば、中国共産党の割と高い官職のトップである。
(*2)2024年11月13日付『中国瞭望』
学校、職場への報復
RV車暴走事件の5日後の16日夜、今度は江蘇省「無錫工芸職業技術学院」で学生による殺人事件が発生した(*3)。
公式発表によると、同事件では、死者8人、負傷者17人が出た。結局、容疑者はキャンパス内で取り押さえられたと報じられた。
同省宜興市の公安局によると、容疑者は2024年に同校を卒業した徐加金(21歳)で、試験に落ちて卒業証書をもらえず、インターンシップの給与にも不満があったという。
さらにネット上では、加害者が残した「遺書」の存在も浮上している。その中には下記のように書かれているという。
「工場は"故意に"私の賃金を遅らせ、保険への加入を拒否し、残業代の支払いを拒否した上、罰金を科し、賠償金の支払いも拒否した」
「工場の従業員は毎日2~3交代で1日16時間働いており、私は病気で数日休んだ。上司も他の人が高熱や鼻血を出していると言っていた」
「学校は"故意に"私の卒業証書を保留にした。ほとんどの人は試験で不正行為をしていた。私が試験に落ちたので、学校は私に卒業証書を与えることを拒否した」
以上のように、中国では大事件が相次ぎ、社会的に動揺が走っている。