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《本記事のポイント》
- "悪い人間"が増殖する世の中に対しての絶望と希望
- 悪に染まった人間に与えられる立ち直りのきっかけ
- 人々が神へと心を向けたくなる日としてのクリスマス
サンタクロースとともにクリスマスに子供たちにプレゼントを配っていくサンタクロース護衛隊長カラム・ドリフトが、悪がはびこり、誰もが身勝手に生きる人間世界に嫌気がさして引退を決意。
しかし、サンタクロース誘拐事件をきっかけに、人間の持つ素晴らしさを改めて確信していくまでが描かれている。見終わると心が温かくポカポカとした気分になる、クリスマスにぴったりの映画だ。
サンタクロース護衛隊長カラム・ドリフトを元プロレスラーで映画『ワイルド・スピード』シリーズなどで知られるドウェイン・ジョンソンが好演。カラムの相棒となる凄腕ハッカーをアヴェンジャーズのキャプテン・アメリカで知られるクリス・エバンスが演じ、得意のアクションを披露している。
サンタクロース護衛隊長カラムは北極に名を馳せる伝説の戦士。サンタクロースが暮らす北極ドームを管理するELFの長官で、勤続年数542年のベテラン。高い身体能力の持ち主で、長年サンタことニックのアシストや身辺警護を務めてきた。
毎年クリスマス・イヴにはサンタのニックに同行し、世界中を飛び回ってきたが、世の中の風紀が乱れ、誰もが身勝手に生きる人間世界に嫌気がさして引退を決意する。
ところが、引退を控えたクリスマス・イヴの前日、何者かがドームに侵入し、カラムの目の前でサンタのニックを誘拐してしまう。誘拐の手引きをしたのが凄腕のハッカー、ジャック・オマリーだと判明。
ジャックを拘束したカラムはその追跡者としての腕を見込んで、2人でニックの居場所を探すことになる。そしてサンタ誘拐事件の黒幕が魔女クリラだと突き止める。
"悪い人間"が増殖する世の中に対しての絶望と希望
世の中や人間に対する不信というテーマは、ディケンズのクリスマス・キャロルを彷彿とさせるが、この映画で描かれている回復のきっかけは、仏教的な「原因と結果の法則」に基づくものになっていて大変興味深い。
引退するべく辞表を提出するカラムに対して、サンタのニックは宗教的指導者として諄々と「原因と結果の法則」を説く。
最初から"悪い人間"が存在するのではなく、人生はすべて、一人ひとりの小さな選択の積み重ねによって形作られていく。その選択の責任は一切が個人の判断に委ねられており、その結果を良きものとするべく、サンタクロースはクリスマス・イヴに贈り物を届けていると言うのだ。
かつて、北欧地域には「アズガルド文明」とでも呼ぶべき文明が栄え、宇宙とも交流があり、キリスト教以前のヨーロッパの宗教のもとになっているとされるが(関連経典『信仰の法』より)、この映画で描かれた、宇宙的力を司り、人類に希望を供給していくサンタクロースの姿は、同文明で信仰されていたとされるオーディン神に近いものなのかもしれない。
「原因と結果の法則」について、大川隆法・幸福の科学総裁は著書『心の挑戦』の中で、大宇宙の理法と全く同じことであるとして、次のように指摘している。
「世界の成り立ちは、原因・結果の法則、縁起の法則によって成り立っている。また一方、人間というものも、この世でのさまざまな諸条件のなかで、自らが魂修行として何を選び取っていくかにより、より優れたものへと登っていくことができる。そしてそこに仏への道がつながっている」
人間は永遠の生命であり、たとえ生きている間に悪を犯し地獄に落ちたとしても、それはリハビリのための"魂の病院"であり、永遠に出られないものではない。「原因と結果の法則」は、天国から地獄までの一切の世界と時間を貫き、人間に向上を目指す生き方を教える根本的な仏神の法そのものなのである。
悪に染まった人間に与えられた立ち直りのきっかけ
この映画のもう一つの見所は、サンタクロース探しに協力するハッカーのジャックが犯罪から足を洗い、まともな人へと立ち直っていく姿である。
ジャックには、一人息子ディランがいるのだが、親の愛を知らずに育ったために接し方がわからない。「他人は利用するか、されるかだ」と考えていたジャックだが、カラムとの出会いによって考え方を変えていく。
ジャックが一人息子ディランとの関係に苦しんでいることを知ったカラムは、サンタクロースのニックから教えられた「原因と結果の法則」を示し、たとえ悪に染まった人間であったとしても、これからの人生の中で、少しでも良い選択をすることによって向上することができ、自らを変えていくことが可能であることを教える。ジャックがこの教えを受け入れ、自らを変えようとするところが物語の重要な鍵にもなっている。
カラムからジャックへのアドバイスは、宗教的な伝道そのものだと言えるだろう。仏神から流れ出した真理が、受け入れた人々の心を浄化し、その人生の選択を変え、やがては社会そのものを変革していくということへの、ほのかな希望がこの映画の底流には流れているようにも見える。
2001年の同時多発テロ事件以降、アメリカ社会では宗教無用論や無神論が幅を利かせていたものの、最近では「神の実在」を説く有神論に関する書籍の出版が相次いでいるという。本作品も、そうした宗教必要論へと回帰する社会現象の一つなのかもしれない。
人々が神へと心を向けたくなる日としてのクリスマス
映画では、誘拐されたサンタクロースが見つからなければ、クリスマスは中止となり、世界中の子供達が絶望に突き落とされることになるという危機感が主人公たちを駆り立てている。
ここにあるのは、救世主の降誕を祝うクリスマスが、いかにキリスト教社会にとってかけがえのないものであるかという伝統的な宗教意識だ。今も、人々にとって、救世主の降誕は最も祝うべき"良きこと"であり、社会を成り立たせている基盤そのものだろう。
「未来というものは、一人ひとりの心のなかにおいて、行動において、変えることができます。そして、多くの人々の力を結集することによって、さらに大きく大きく変えていくことができるのです。私がこの地上に生まれたのは、人類の未来を変えるためです。明るい二十一世紀を拓いていくためです。あなたがたに未来を贈るためです。未来の人類に幸福を与えるためです」(『大川隆法 東京ドーム講演集』第11章「人類の選択」より)
「原因と結果の法則」という仏神の教えが、悪に染まった人間の心をも変え、人間や社会への不信感を癒す力ともなり得ることを描いた本作は、クリスマスという"神に心を向けたくなる季節"にぴったりの作品だと言えるだろう。
『レッド・ワン』
- 【公開日】
- 全国公開中
- 【スタッフ】
- 監督:ジェイク・カスダン
- 【キャスト】
- 出演:ドウェイン・ジョンソン クリス・エバンスほか
- 【配給等】
- 配給:ワーナー・ブラザース映画
- 【その他】
- 2024年製作 | 123分 | アメリカ
公式サイトhttps://wwws.warnerbros.co.jp/redone/
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