東日本大震災の現地調査をした専門家の分析で、津波で壊れた堤防は、その低さに原因があったことが明らかになった。

12日付産経新聞によると、堤防が壊れた要因として挙げられるのは2つ。1つは「洗掘(せんくつ)」という現象。堤防を乗り越えた波が巨大な水の塊となって加速しながら堤防の裏側(陸側)に落下し、すさまじい勢いで土台部分をえぐった(高知大学総合研究センター防災部門の原忠准教授の分析)。

2つめは「引き波」。堤防を超えて陸地を襲った波が、しばらくすると、今度は斜面を駆け降りながら自動車などの重量のあるがれきを巻き込み、引き波となって打撃力を増して陸側から堤防にぶつかった。洗掘現象や水没して土台が不安定になっていた堤防は、簡単に壊れてしまったという(東京大学地震研究所の都司嘉宣准教授の分析)。

震災以降、本欄(※1)でも指摘してきたが、これまでマスコミは、岩手県宮古市田老地区の総延長2.4kmの「日本一の防潮堤」や、岩手県・釜石港の全長1960m、深さ63mの「世界最深」のギネス認定を受けた防潮堤が、無残に破壊された様子を繰り返し報じ、国民に「堤防は役に立たない」という印象を与えてきた。だが、「日本一の防潮堤」の高さは10mで、「世界最深」の高さはたった6mである。岩手県普代村は、周辺の市町村で多くの犠牲者が出るなかで死者ゼロ、全壊住宅ゼロという奇跡的な被害の少なさだったが、この村を守ったのは高さ15mを超える普代水門と太田名部防潮堤だった。

被災地の復興計画では、住宅を高台につくるという案が出ている。普代村でも水門の建造当時は、高台への集団移転を求める声があったが、当時の村長が、土地の有効利用や生活環境の整備を計画に進められるなどの効果の大きさを考慮して、水門と防潮堤の建造を推し進めた経緯がある。

高台案を否定するわけではないが、今回の震災では、もし20m級の防潮堤があれば沿岸地域の津波被害のみならず、福島第一原発の事故も防げたはず。自然の脅威を恐れるだけでなく、人間の英知や科学技術力を駆使して敢然と立ち向かうことも必要である。(格)

【本欄関連記事】※1

319日付 津波の犠牲者「9割が溺死」の教訓2

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1581

320日付 蓮舫「スーパー堤防は不要」の不見識

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1590

410日付 堤防は「高さ」にこそ注目すべき

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1734

【参考記事】※2

「東日本大震災特集」第二部 緊急提言「大震災復興プラン」大川隆法総裁「震災復興への道」

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1649