澁谷 司

アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

習近平氏が2012年に政権の座に就いて以来、主席の「個人的な指揮と展開」が中国経済の衰退を招き、米中関係を悪化させ、世界経済にも悪影響を与えていると考えられている。近頃、この状況を改めて問題視する国際メディアが増えている。

習氏の傲慢さと統制が内外経済に悪影響

オーストラリアの有力紙『シドニー・モーニング・ヘラルド』は9月3日付で、「中国経済のムードが暗くなる中、習近平に計画なし」と題する記事を掲載した。習主席自身が「個人的に指導し展開した」中国経済だが、その苦境に対処できない。それが豪州経済にも波及すると指摘した。

同4日付『日経アジア』も「中国で高まる異論、習近平の2025年ビジョンを危機にさらす」と題する記事を掲載し、習政権の問題と失敗について分析している。

現在、習主席は中国のネットユーザーから稀に見る厳しい批判に直面しているが、それは主席の傲慢さだけでなく、表現の自由を制限していることも理由の一つだという。

最近の『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』の記事によれば、習主席が「個人的に指導し展開した」「ゼロコロナ政策」は、中国共産党の宣伝機関が早い段階で公表を中止するほどの大失敗に終わった。

中国内外の多くのオブザーバーやアナリストの見解によれば、同国の状況を悪くしているのは、習主席があらゆる産業の"最高の専門家"だと「自任」していることだという。

他方、『ブルームバーグ』の記事によれば、習主席が政権を掌握して以来、主席の"君主"的地位が強調され、中国指導部内での経済問題に関する比較的自由な議論は過去のものとなっている。

最新の『エコノミスト』誌の中国経済に関するカバーストーリーでは、今年上半期に中国から引き揚げられた「外国直接投資」は過去最高の148億米ドル(約2兆720億円)に達したという(*1)。

(*1)2024年9月9日付『中国瞭望』

習主席の4つの「未完成プロジェクト」