2024年11月号記事

破綻に向かう年金制度に世界はどう立ち向かうべきか?

働く高齢者を奨励する政策を!

年金制度が崩壊しつつあるなかで何をすべきか。可能性を探った。

年金は将来本当にもらえるのか? 「老後2000万円」問題をきっかけに多くの国民は疑念を深めている。

現役世代の時に積み立てたお金を、老後に受け取れると思っている人は多いが、それは間違いだ。日本の年金制度は、現役世代が支払った保険料で高齢者世代を扶養するという賦課方式である。

家族よりも国家が国民の面倒を見るという「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家の代表的制度で、少子高齢化で現役世代の割合が減れば保険料収入も減り、制度が維持できなくなる。

厚生労働省は「100年安心プラン」と称し、積立金は枯渇しないと言うが、それは絵に描いた餅で、積立金は2043年に枯渇するという試算もある(*1)。

恐ろしいのは、年金純債務(*2)が1100兆円にものぼり、これが政府債務1200兆円とは別に存在することだ(*1)。

年金制度自体がすぐに破綻するわけではないが、(1)高齢者の年金水準を下げるか、(2)現役世代の保険料を引き上げるか、(3)税負担を増やすか、しかなくなる、と一般には言われている。

膨大な債務が招く国債暴落の事態も危惧される。財源の裏付けのない国債発行は、国債に対する信用を低下させ、国債価格暴落で金利は高騰。それによってさらに国債の利払い費が増え、財政は悪化するという悪循環に陥りかねない。

日本に限ったことではない。米格付け会社のフィッチは2023年1月、「高齢化のコストを軽減する対策が講じられない場合、60年までに世界の経済大国の約半数がジャンク債に格付けされる」見込みだと警鐘を鳴らした。

(*1)島澤諭著『年金「最終警告」』(講談社現代新書)
(*2)国民に対して、過去の加入実績に応じて約束した給付額のうち、国が積み立ててきた金額では足りない分を意味する。要するに次世代へのツケである。
※文中や注の特に断りのない『 』は、いずれも大川隆法著、幸福の科学出版刊。

 
次ページからのポイント(有料記事)

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