2024年11月号記事
第5回
釈量子の宗教立国への道
幸福実現党党首が、大川隆法・党総裁による「新・日本国憲法 試案」の論点を紹介する。
幸福実現党 党首
釈 量子
(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/
世界の国造りの根底にある神の心
前文 ②
新・日本国憲法 試案〔第一条〕
われら日本国国民は、神仏の心を心とし、
日本と地球すべての平和と発展・繁栄を目指し、
神の子、仏の子としての本質を人間の尊厳の根拠と定め、
ここに新・日本国憲法を制定する。
前回まで〔第一条〕を三回に渡って見てきましたが、「新・日本国憲法 試案」において最重要といえる〔前文〕に改めて戻り、学びを深めてまいります。
各国の憲法前文に明記された神仏
憲法の前文は、一般的に「憲法の顔」とも呼ばれ、その国の特徴が際立つところです。制定の由来や趣旨・目的を謳ったり、基本原則や理念を宣言したりなど、いくつかの類型があるとされます(*1)。
「新・日本国憲法 試案」の〔前文〕について、大川隆法・党総裁は、「この前文の趣旨は何かというと、『日本は宗教立国を目指す』ということです。それを、はっきりと宣言したのです」と説かれました(*2)。
「宗教立国」というと、日本では戦前の国家神道へのアレルギーから拒否反応を示す人も多いですが、宗教を国家の基盤に置く「宗教立国」は世界のスタンダードです。
世界各国の憲法前文を見れば、「全能の神」「造物主」という言葉が当たり前のように記されています。
スイスの憲法前文も「全能なる神の御名において! スイス国民及び諸カントン(州)は、創造物への自らの責任を心に留め」と神への言及から始まっています。宗教改革の火蓋が切られた地ならではです。
仏教国のタイやスリランカは、前文に「仏暦二五六〇年」などと、憲法制定年を記し、仏教国であることを宣明しています。なお、東南アジアの小乗仏教国が「仏暦(釈尊入滅後)2500年祭」を盛大に祝った1956年は、大川総裁の再誕の年です。
祭政一致のイスラム教諸国での神の記述はストレートです。ブルネイ・ダルサラーム国憲法は「祈願 慈悲深く慈愛あまねき神の御名において、宇宙の主、神に讃えあれ」と美しい祈りの言葉から始まっています。イラン・イスラム共和国憲法は「憐れみ深く、慈悲深い神の御名において」という言葉の後に、前文が続きます。
(*1)芦部信喜著『憲法学I憲法総論』(有斐閣)
(*2)大川隆法著『宗教立国の精神』(幸福の科学出版)
「人間を超えたルールがある」
最近では、2004年にEU憲法条約草案の前文で「神に言及するかどうか」が議論となりました。最終的には神の記述は入らなかったものの、ドイツ・カトリック中央委員会のフーバー・ティンテロット氏は「我々にとって、神への言及は中心的な意味を持っている」「EU条約の前文に神を盛り込むことで、人間が何でも自由にできるわけではなく、人間レベルを超えたルールがあり、それによって人々が共存しやすくなるということが明確になるだろう」と語っています。
日本でも、2013年5月の衆議院憲法審査会で、「憲法前文で『神』に言及している諸外国の憲法の例について(メモ)」と題した資料が配布されたことがあります。衆議院法制局の橘幸信参事が「諸外国においては大きな論点になり得るのだということを改めて痛感いたすところでございます」と述べています。
国造りの根底には宗教心がある
注目したいのが、ソ連崩壊後のロシアが宗教で国家再建を果たしていることです。2020年7月4日施行の改正憲法に、「神への信仰を我々に伝えた先祖の記憶」という文言が追加されたのです。プーチン大統領がロシア正教を立て直し、国家に精神的主柱を打ち立てたのです。
現在、日本では公の場で宗教について語ることが難しく、無神論国家に等しい状況です。大川総裁は「戦後の日本において、『宗教立国を目指す』ということを、憲法前文で宣言することは、ある意味で、一種の革命です」と語られました(*2)。ただ、大川総裁は日本人が本来持っていた信仰について「『民族主義的なものだけではなく、奥には、世界神的なものとも、しっかりとつながっている考え方がある』というように考えています」(*3)とも述べています。武士道精神や穢れを嫌う日本人の高い精神性こそ、日本を繁栄させてきた原動力なのです。
人間はどういう存在なのか。この世に生きているだけの存在なのか。それとも、肉体のなかに、もっと高貴な魂が宿っている存在なのか──宗教立国とは人間の尊厳をかけた重要テーマです。それを訴えられるのは宗教政党である幸福実現党しかないのです。