《ニュース》
オーストラリア連邦裁判所がこのほど、「女性に性転換した元男性」が女性専用のソーシャルメディアアプリへのアクセスを拒否されたのは「間接的差別」にあたるとして、アプリの運営会社に賠償金などの支払いを命じました。
《詳細》
訴えを起こしたのは、出生時は男性で、その後、性別変更の手術を行い、出生証明書を変更して女性として生活してきたロクサーヌ・ティックル氏です。
ティックル氏が2021年にダウンロードした女性専用のアプリは、「女性が安全な空間で自身の経験を共有できる、オンライン上の避難場所」と掲げられているもので、顔写真をAIに判定させて男性と判定されると使えないものでした。
ティックル氏は当初、査定をクリアして参加していました。ところが、7カ月後に利用資格を取り消されたことで、アプリ会社が外見によって自分のことを「女性ではない」と判定したと疑っています。そして、自分は女性を自認する者として女性向けサービスを利用する権利があり、差別を受けたと主張しました。
一方、同ソーシャルメディアのサル・グローヴァーCEOは、性別とは生物学的概念であり、変えられるものではないと主張し、「ティックル氏は生物学的には男性」であるとの認識を示しています。これに基づいて弁護団は、ティックル氏の利用を拒否することは合法だったと主張しました。
連邦裁の判事は、性別は「必ずしも男性・女性の二つの要素で構成されているものではない」ということは、過去の判例で一貫して指摘されているとし、ティックル氏の主張を認めています。グローヴァー氏は、「残念ながら、私たちが予想していた判決を受けた」としつつ、今後、連邦高等裁判所への上告を目指しています。
この判決が大きな波紋を広げているのは、裁判所が人間の性別を「男性・女性に限定されない」としていることです。それにより懸念されているのは、これまでは当然のものとして受け入れられてきた「女性だけの空間」という概念が破壊され、女性の権利を侵害しかねなくなることです。
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