© 五十嵐大/幻冬舎 © 2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

2024年10月号記事

Pick Up Movie

編集部がオススメする「今こそ観たい」映像作品。

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

9月20日(金) 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

(本作では、バリアフリー上映も実施されます)

"聴こえない世界"で紡がれた、温かな愛の光

【スタッフ】
監督:呉美保、脚本:港岳彦、原作:五十嵐大
手話監修協力:全日本ろうあ連盟
【キャスト】
主演:吉沢亮 出演:忍足亜希子、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでん
【配給等】
配給:ギャガ
【公開日】
2024年9月20日(金) 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

 

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© 五十嵐大/幻冬舎 © 2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会

 

【レビュー】

宮城県の小さな海辺の町に生まれた五十嵐大は、時間がゆっくりと流れるような環境の中で、両親に愛されながら健やかに育っていた。4人の家族は世間と少しだけ異なり、祖父は博打好きで気性の荒い乱暴者。祖母はいつもお祈りをしている、とある宗教の熱心な信者。そして両親は、音のない世界で生きる聴覚障害者だった。幼い彼にとってはこれが"ふつう"の暮らしで、大好きな母を守るために手話で通訳する、そんな日々がとても楽しかった。

しかし、障害者とその子供への偏見を目の当たりにした大は、いつしか人間不信を募らせ、母にも手話を使わなくなっていく。決して弱音を吐かない朗らかな母。その彼女を守りたいのに傷つけてしまう心を抱えた大は、逃げるように東京へ旅立っていった。

やがて帰郷したある日のこと、心の底に埋もれていたある記憶がよみがえるが……。

聴こえない両親から生まれた聴者の子"CODA"として育った作家・五十嵐大の自伝的エッセイを原作として、静かで、美しい物語が誕生した。母親役・忍足亜希子をはじめ、ろう者の登場人物は全員ろう者の俳優が演じる。そして、全国に2万2千人と言われるCODAの葛藤を軸に、普遍的な母子の愛を巡る心の軌跡が、繊細に描かれていく。母の変わらぬ愛、それを無下にした後悔、温かい記憶、与えられたものの大きさ……。"聴こえない"がゆえに一層純粋に、深く強く母の愛が光る。大が出会ったろう者たちの手話文化や屈託のない生き方にも、愛おしさが感じられることだろう。

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ザ・リバティWeb シネマレビュー

「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

(星4つ。満点は5つ)