2024年9月号記事
「ディープステート」論の正しい見方
トランプ現象で広がった"陰謀論"をどのように考えればよいか。
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「ディープステート」論の正しい見方 - Part 2 「グローバリズム」の正しい見方
「グローバリズム」の正しい見方
日本の一部の保守派は、ディープステート論の延長として、「グローバリズム論」を強く主張している。その基本的な見立てはこうだ。
「グローバリズムが世界を滅ぼす」という旗印の下、気候変動やコロナワクチン、LGBTQなどのリベラル的な運動が日本に押し寄せ、今の政府はその動きに同調してきた。だがトランプ氏は、気候変動やワクチンなどに抵抗する人物(反グローバリズム)であり、日本も反グローバリズムでいくべき──。
果たして、こうした見方は問題の本質を捉えているのだろうか。
グローバリズムは経済用語である
グローバリズムという言葉はもともと、1990年代以降に広がった「経済のグローバル化」を指す。
ソ連を崩壊させたアメリカは、「世界一の覇権国としてのパワー」を背景に、自国に有利な経済的ルールを世界に一律で広めようとした。
アメリカとしては、「それで世界が豊かになり、幸福になる」と善意(?)に考えたのかもしれない。だがその結果、欧米の製造業が安い人件費を求めて中国などに流出し、自国の雇用を多数失った。
大川総裁はグローバリズムの誤算について、「どこにでも同じルールを適用していくと、結果として共産主義に似てくるところがある」と指摘している(*1)。
その後21世紀に入り、気候変動やLGBTQなどが本格的に国際問題化していく。日本の一部の保守派はそれらも"グローバリズムの一種"と解釈し、中には「グローバリズムが世界を支配している」という世界観まで打ち出す人も出てきた(*2)。
現在ただ今の問題を理解しようとしていると思われるが、実はわざわざグローバリズムという言葉を使わなくても、「共産主義」や「全体主義」といった言葉を使った方が、その問題の本質を明らかにすることができる。いくつか例を挙げたい。
(*1)『繁栄への決断』
(*2)グローバリズムの定義は無数に存在し、明確な定義がないことも混乱を呼んでいる。ある保守系論客は、キリスト教を広めたパウロをグローバリズムの元祖と位置付けている。中身については価値判断せず、世界に影響を与えるものはとにかくグローバリズムだと言いたいのかもしれない。
気候変動は姿を変えた共産主義
ワクチン政策は全体主義だった
「グローバリズム」の正しい見方 「先祖返り」では未来は開けない