2024年9月号記事
型式認証試験「不正」の本質とは?
国土交通省は日本の自動車メーカーを守れ
自動車メーカーを苦しめる複雑な「型式指定制度」の現状に迫る。
トヨタ自動車など日本を代表する自動車メーカー5社で、型式認証試験の不正があったと、6月初旬に国土交通省が発表した。その後、5社すべてに立ち入り検査が行われた。
不正の対象とされたのは、生産終了しているものも含めて5社合計38車種、そのうち3社が生産中の6車種について出荷停止を指示された。
自動車の量産化に必要な型式指定
問題となっている「型式認証試験」とは何か。メーカーが新しい自動車を大量生産、販売する際には「型式指定」を取得する必要がある。これを得るために国が定めた安全性能や環境基準を満たしているかをチェックするのが「認証試験」だ。
各社は開発段階からさまざまな試験を行っている。そうして作り上げたサンプル車両に改めて国が定めたルールに沿って「認証試験」を行い、その試験データとサンプル車両を国土交通大臣に申請し、審査を通れば「型式指定」を得られる。
その後はメーカー内で型式通りに組み立てられているかを確認する「完成検査」を行えば、本来必要な一台ずつの検査を省略できる。
この型式認証制度に関する不正は1989年以降度々起きており、ここ10年は断続的にみられる。今回は、「認証試験」が国の定める方法で行われていなかったことが発覚し、不正とされた。
これが本当に「不正」なのか?
ただ、今回明らかにされた「不正」は、一般的な感覚に照らして「不正」とされるべきなのか疑問が残るものが多い。
自動車の「型式指定制度」のプロセス
各メーカーによる開発段階での試験と国が定めた方法で「認証試験」を実施
▽
▽
国土交通大臣にサンプル車と認証試験データを申請
▽
▽
国が定めた安全性能や環境基準に適合しているかを審査
▽
▽
「型式指定」を受ける
▽
▽
各メーカーが「完成検査」を行い完成検査修了証を提出
【事例1】より厳しい条件下でシートベルトの安全を確認したのだが……
【事例2】より厳しい衝撃角度で安全を確認したのに……
【事例3】実際の走行中の環境を再現した実験を行ったところ……
輸入車は書類審査だけでパス
政府は悪意なき民間を守る仕事を
一番の問題は制度を変える仕組みがないこと/自動車経済評論家 池田 直渡氏インタビュー